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子育てと仕事を両立させ、女性管理職として働く魅力とは。富田製薬(株) 女性執行役員に聞く。

企業にとっても、女性管理職の登用や女性が活躍する職場づくりは注目のテーマです。
しかしながら、現状としては企業の課長級以上の管理職に占める女性の割合は2022度12.7%とまだまだ低く、女性の管理職登用は進んでいない実情があります。

10月のラジオ放送では、「女性が管理職を目指す魅力、そして管理職への目指し方」を、富田製薬株式会社にて、執行役員管理本部長を務めていらっしゃいます、夏目敦子さんと一緒に考えていきます。

夏目敦子氏
徳島県出身。教育学部卒業後、ジャストシステムに入社。人事部主任として活躍後、リクルート代理店へ入社し、営業リーダーを経験。その後、富田製薬株式会社へ転職する。人事部長、管理本部長を務め、執行役員として現職に至る。二児の母。
資格取得:幼稚園教諭、小学校教諭、秘書検定、第二種衛生管理者、産業カウンセラー、ハラスメント相談員。

中西昌子氏
1981年生まれ。徳島県出身、早稲田大学人間科学部卒。東京でエン・ジャパンの求人広告営業を経験した後、徳島へ帰郷し、リクルート代理店で3年勤務。30歳でムツビエージェント(株)を創業し、代表取締役へ就任、現在に至る。一児の母。

松坂智美氏
幼少期は神奈川県で過ごす。8歳のときアメリカへ父の転勤に伴い渡米。16歳で単身帰国。上智大学経済学部を卒業後、人材教育コンサルティング会社に入社。秘書業務や在庫管理業務、法務業務を担当。36歳で人材教育コンサルティング会社を退社し、AYAクリエイティブを設立。2021年10月に家族とともに神山町へ移住。二児の母。

松坂智美:10月の第5回目のゲストとしてお越しいただいたのは、富田製薬株式会社にて、執行役員管理本部長を努めていらっしゃいます、夏目敦子さんです。今回は、女性管理職の現状や管理職として働く魅力について考えていきます。

夏目さんは大学卒業後、株式会社ジャストシステムに入社、入社5年目で人事部主任に昇格、12年勤務されています。その後、リクルートの代理店へ営業職として転職。入社翌年にはリーダー職に昇進しています。リクルート代理店で12年勤めたのちに、現在の富田製薬にて人事部次長として入社。翌年に部長に昇進、2021年に執行役員に昇格され現在に至ります。

中西さんより、女性が管理職を目指されるうえで、非常に良いロールモデルになる方がいるということで、夏目さんをご紹介いただきました。

中西昌子:はい、そうですね。先ほどのご紹介でもあったように、管理職にどんどんと昇格されていらっしゃいます。お勤めである富田製薬様は1893年に創業、今年で130周年を迎える歴史ある企業です。徳島の2022年度年商ランキングで12位、従業員数も615名いらっしゃる徳島の優良・名門企業です。

(富田製薬様 本社)

その中で、執行役員管理本部長というポジションですので、女性でキャリアを築いていくことを目指される方にとってとても参考になると思い、ご紹介します。

また、企業にとっても、女性の管理職を増やしていきたいというのは、県内の企業様からもよくお話を聞くのですが、どういう女性にどのようにキャリアを歩んでいただければ役員を目指していただけるのかということを、企業サイドにも考えるきっかけにしていただきたいなという風に思っています。

松永智美:厚生労働省が行った調査で、企業の課長級以上の管理職に占める女性の割合は昨年度12.7%でした。現在の方法で調査を始めて以来、最も高くなったものの、前の年に比べて0.4ポイントの上昇にとどまりました。まだまだ女性が管理職になるためのハードルが非常に高いようです。

夏目さん、徳島でも女性が管理職として働くハードルは高いのでしょうか。

夏目敦子:そうですね。現在の方法で調査を始めた2009年以降、13年経つのですが、まだ2.5ポイントの上昇にとどまっています。国際的に見ても、労働政策研究機構が今年3月に公表した結果を見てみると、フィリピンは53パーセント、スウェーデンでは43パーセント、アメリカでも41.4パーセントです。日本はG7でも最下位とかなり低い水準となっています。

しかし一方、2022年12月発表の帝国データバンクの調査結果によりますと、徳島県は中西さんのような女性社長はとても多く、県内企業の中の11パーセント余りを占めて、沖縄と並んで全国1位です。あまり実感もないのですが、女性管理職の人数も全国平均より多いと発表されています。

また、少子高齢化により労働人口が減少して、人員確保が困難になっていることを受けて、県内の各企業では高齢者や女性の雇用に目を向けているという現状はあります。そして、各企業では今まで以上に、女性の活用の必要認識は高まっています。また、男性育休も取り入れられましたので、多様な働き方への理解も深まってきています。

ですから、私が考えるには、女性の気持ち(覚悟)次第では、確実に活躍できるフィールドというのは広がっています。しかし、一方で女性からは、「家庭との両立は困難」「自信がない」「管理職を見ていると大変そうなので、今のままでいい」などの声も大きく、弊社の中でも聞こえてきています。

まだまだ、身近に具体的な行動事例や目標となる女性管理職のロールモデルが少ないため、やはりそういった方々の不安払拭(ふっしょく)に繋がっていない、自身の管理職としてのイメージがわきにくく、不安が大きいのだと感じています。

中西昌子:ですので今日は、管理職になるに必要なマインドや、若い頃のキャリアのお話、どういう風に思い、今に至るのかといったお話を聞かせて頂ければと思っています。管理職になりうる女性が「私も挑戦してみよう!」と思っていただければと思います。

松坂智美:中西さんは、夏目さんと一緒に働いていた時期があると聞きました。夏目さんはどのような方でしたか?

中西昌子:前職のリクルートの代理店で一緒に働いていました。営業職としてバリバリ働いていて、仕事がとてもできるというのはもちろんですが、お二人のお子様もいらっしゃって、仕事だけではなく、子供とサッカーの練習を一緒にしたというお話を聞かせて頂くなど、子どもとの時間もとても大切にしていたことも印象的でした。

一方、営業職として働いている中でも、営業職だけをするのではなく、当時から研修の講師をされたり、産業カウンセラーの資格を取得したりと、常に通常業務に加えて、自己成長できるようなことに挑戦されたり、スキルを磨かれていたことも印象的でした。本当に楽しみながら、人生を過ごされている方だなという印象を持っています。

松坂智美:お子様も育てながら、現在のキャリアを築かれるのは相当大変だったのではないかと思います。夏目さんのキャリアを振り返りながら、今に繋がるきっかけやエピソードなどお聞かせいただければと思います。

これからのキャリアを目指す女性の参考にもなると思いますが、新卒入社時にどのようなキャリアビジョンお持ちだったのでしょうか?

夏目敦子:そうですね。若い頃から、1人の人間としても、母としても、自分自身の人生もやはり自分らしく生きたいというのがありました。ですので、まず自分の価値を高めていきたい、それを認めてもらえるような職場を目指したいと思いました。

就職活動において、会社選びで最重視したのは「女性が活躍している会社(女性を評価してくれる会社)」でした。1社目のジャストシステムに企業訪問した際に、従業員がイキイキと働いており、若い女性でも責任ある業務を任せてもらえており、またすでに管理者にも女性がたくさんいたので、そういったところに魅力を感じ、1社目の入社を決めました。

当時は、子どもが好きで、子育てに全力で取り組みたいけれど、自分の人生、自分の力も高めて社会に貢献したい。自分の存在価値を示したいとの思いが強かったですね。そのため、子育てと仕事の両立は体力のある若いうちに・・との思いで、結婚は24歳、第一子は25歳、第二子は28歳で出産しました。

中西昌子:キャリアのスタートの時点から、企業や社会で活躍したい、するのだという想いをお持ちだったのですね。

松坂智美:キャリアをしっかりと築きたいと思う中でも、社会に出る中で少しずつ諦めてしまう女性も多いのかもしれませんが、夏目さんはキャリアを着実に築いていくのだと思えるようなきっかけなどはありましたか?

夏目敦子:そうですね。やはり人との出会いが私にとっては、すごく大きかったですね。1社目でお世話になった人事部長は、東京からリクルートをやめて、ジャストシステムの人事部長になられた方でした。その方の下で働かせていただいたときに、人事の仕事とはというところから入りました。「仕事をするうえで、男性・女性、年齢、学歴は関係ない。役割を認識して責任をもって任された業務を遂行し、結果を出していたらそれを適切に評価する。また本人と向き合い、本人のキャリアデザインと会社の組織戦略にマッチングさせながら、本人と会社をともに成長に導くのが人事の仕事だ」との言葉が、今も私の軸となっています。

この人の下であれば、自分自身も頑張れば成長できる、しっかり頑張れば正当に評価されると思い、この時期が自分でも一番頑張り、仕事の基礎ができたときですね。自分自身もこんな人になりたいと思ったのが、自分のキャリアをもっと高めていきたいと思った大きなきっかけでした。

松永智美:そんな素敵な出会いがあったのですね。はじめて管理職になったときは、どのような気持ちでしたか?

夏目敦子:そのような人事部長から任命されたので、認められたことへの嬉しさがありました。初めて主任として1名ではありましたが、メンバーの育成と担当業務を任されたときは、嬉しさと共に責任の重さを感じました。しかし、身近に目標となり、何か困れば相談ができる尊敬する管理者がいましたので、やってみようと前向きに思い、不安はありませんでした。しかし、実際に進める上では、メンバーと管理者の周りからの期待と責任、業過の違いなど、たくさん悩むことがありました。

中西昌子:企業としては、若い時にこそ責任ある役割を任せ、見守るというスタンスが大切だと思います。私も20代前半にリーダーとしての経験をしましたが、うまくできたことも、できないことも良い経験になりました。

松坂智美:夏目さんは、そもそもキャリアを目指す中で、管理職、役員などを目指されていたのですか?

夏目敦子:管理職を目指していたわけではありません。自分の中で明確には、例えば部長になりたい、取締役になりたいというような思いはありませんでした。それよりは、自分の知識とかコミュニティを広げていって、自分の価値を高めていきたいと考えていました。そして、周りの人に必要とされるような人材になりたい、という思いはすごくありました。

現職の富田製薬に入社する際に、前任の人事部長が1年後にご定年を予定されていたため、その後任にとのお話を当時の代表の方からいただきました。当時でも従業員400名規模の会社でしたので、自分自身で務まるのかと不安はありました。

また、周りからも歴史も古く、保守的な会社なので、プロパーの社員に気持ちよく受け入れてもらえないのではないか、と反対の声が多かったですね。

女性の管理職がいないということも認識していたので、とても悩みましたが、現代表の富田や当時声をかけてくれた取締役が何度も面談してくださり、女性が活躍できるような会社にしたいという思いを伺いました。不安以上に必要とされているということがありがたく、その思いにこたえたいとの一心で入社を決意しました。

入社後は社長、その他取締役、同じ部門長のメンバー、人事部のメンバーに支えられ、会社の理解・課題の抽出、課題解決に向けた取り組みを進められています。今までの人生を振り返り、私は本当に人と環境に恵まれていると感謝しています。

中西昌子:やはり女性に管理職を打診すると、辞退されることが多いそうです。女性は男性と比較して、自分の力を過小評価してしまう傾向があり、男性の場合は7割、8割できそうであればやりますという方は多いのですが、女性は100%できるという確信がない場合、不安から管理職を辞退することは多いようです。そういった点が、女性が管理職になりにくい部分もあると思います。そうなると「やはり女性はやる気がない」と判断されてしまうこともあります。

特に、企業も管理職に打診する際は丁寧に、なぜあなたが必要なのかという点をお伝えすることが大切だと思います。富田製薬様は夏目さんに対して必要性を説く面談を繰り返されたというのは本当に素晴らしいご対応だったと思いますし、またその期待に応えられたことも素晴らしいと思います。

松坂智美:おっしゃる通りですね。ここまでは、夏目さんに女性管理職になるまでのキャリアについて伺いました。

次に、管理職チャレンジする女性側にも意識の壁も大きいと思いますが、女性が管理職になるにあたって必要なマインドや考え方、キャリアの築き方のポイントを伺いたいと思います。

夏目敦子:そうですね。「まずはやってみる」「現時点で多い男性のロールモデル通りを目指さない」の2点をお勧めしたいと思います。過去の男性管理職のような働き方を真似することは困難です。自分らしいマネジメント、リーダーシップを確立し、上司、同僚、部下、後輩等を巻き込みながら理解者を増やしていくことが重要だと思います。

松坂智美:私が40歳手前で、周りはちょうど昇格するかしないかの瀬戸際にいる友人が多いです。しかし、管理職になりたくないという意見も多くあります。正直、女性管理職って良いのですか?

夏目敦子:そうですね。大変なこともありますが、メリットもたくさん感じています。私事ではありますが、約20年前から子ども二人を一人で育てています。近くに両親がおり、色々な人に支えられています。そんな私にとって、大きなメリットが2つあります。一つは、管理職になるにつれ、人に触れるということで、意識や知見の幅が広がり、人生が充実していくことです。元々は、ネガティブな私でしたが、少しずつ自己肯定感も高まっている気がします。二つ目は、子どもにそういった生き生きとした姿を見せられる点です。キャリアを積んで、経験で成功を積んでいくことで、周りの評価も高まり、自分の価値も高まっていきます。そして、それに伴って収入が増えていくという好循環が生まれます。

また、自分自身の活躍の選択肢も広がりました。例えば、働き方ですと、子育てに時間が必要なときは、仕事を少し抑えて、両立したいときは、短時間でもしっかり成果が出せるような職場を選べるようになります。今の私のように、子どもが独立して、自分の時間がとれるとなると、自分のキャリアをさらに生かして働ける場を選ぼうといった形で、キャリアを積んでいくと、働き方のチャンスやワークライフバランスの幅も広がります。

中西昌子:そうですね。やはり、転職を支援している中でも、管理職を経験された女性であれば、40代50代となっても、転職のチャンスがすごく広がるというのが、一番のメリットですね。

また女性の役職別の月給は係長クラスで約33万円、課長クラスで約44万円、部長クラスで約52万円と、いずれも全体平均の約25万円を上回っています。

経済的な自立を目指したいと思われるのであれば、管理職を目指すことに大きなメリットがあると思います。

やはり女性も、自分自身が働きやすい会社にするためにも、より経営に近いポジションで意見が言える管理職になることは重要だと思います。また、女性がより働きやすい社会・会社を作るためには、一人でも多く女性の管理職が増えることが大切だと思いますので、ぜひ挑戦してほしいと思います。

夏目敦子:男性も女性も平均寿命が延びている今、子育てが終わると自分の時間もたくさん取れます。一度しかない自分の人生を楽しむためにも、今は大変でも将来に夢を描いて、自身を高めることで、視野も視座も高まり、様々な選択肢も広がります。

「リカレント教育」や「リスキリング」という言葉を良く耳にします。「リカレント教育」とは、社会人になっても、時代に合わせて学びを反復・継続していき、仕事におけるスキルや知識を身につけ、キャリアアップを目指すことです。

「リスキリング」とは、今のスキルや知識とは別に、新しいスキル・知識を身につけることです。新しいスキルや知識を身に付けることで、新たな仕事にチャレンジできるかもしれません。

松永智美:個人的な話をすると、私は中小企業の女性管理職に向いていないと思って、独立してしまった部分がありまして、例えばどういう女性が女性管理職に向いていると思われますか?

夏目敦子:そうですね。私は管理職に向いているか、向いていないかの男女差はあまりないと考えています。

また、時代によって、管理者に求められる役割・力に変化があるとも考えています。今の時代の管理職で考えると、時代の流れのスピードもかなり速くなっています。そして、世の中のニーズや、メンバーの価値観も多様化しているため、変化を恐れずチャレンジし続けられる人」「メンバーにやる気をおこさせ組織としてのパフォーマンスを上げることができる」「周りのメンバーを信じ仕事が任せられる人」「同時にいくつものことがこなせる人」が向いているのではないでしょうか。

中西昌子:そうですね。女性だと管理職に対しての意識の壁があり、向き不向きを考えすぎてしまうのかもしれませんが、会社から打診があるということは、適性があるということだと思います。夏目さんのように、打診を頂いた上司などとしっかりとコミュニケーションをとって、どのような管理職像を期待されているのか、なぜ、会社としてそのような判断をしたのか理解することが大切だと思います。

松坂智美:女性を管理職登用するために、どのような対策があれば、女性の管理職が増えると思いますか?

夏目敦子:女性は子育てをしたり、ご家族の介護もあったり、色々な状況があると思うのですが、どうしてもそういった女性というのは、時間として拘束されたり、やはり休みを取らなければいけない停滞時期があると思います。

ですので、昔ながらの継続したキャリアによる評価(女性で子育てをされる方はどうしても育休機関が発生し、その間の評価が停滞しがちです)、残業し時間を働いた方が評価されるといったような評価制度から脱却し、目線を変えていくということはすごく大事です。

管理職に求めるもの(管理職に必要な力=部下にやる気を起こさせパフォーマンスを上げる、職場を円滑に回す、部下が働きやすい環境を作るなど)が満たされれば管理職になれるような評価、制度とすることが大切と考えます。

そして、目標となる女性のロールモデルも必要です。1企業内でロールモデルを育成するにはかなりの時間がかかるため、県内企業で連携して女性管理職を育成する取り組み、バックアップ体制が有効だと感じます。また、県を入れて、みんなで協力しながら、女性管理職を育成するといった取り組み、バックアップがあるといいのではないかと考えています。

コロナ前には、鳴門市内の企業様4社合同で女性活躍推進セミナーを数回開催しました。こちらも再開したいと考えています。

中西昌子:女性が自ら持つ意識の壁を超えられるような、サポートがとても大切だと感じます。「自分でもできるかもしれない」「やってみよう」と思える女性が一人でも増えるといいですね。

松坂智美:そんな女性のキャリア支援に力を入れる夏目さんが、転職時に、富田製薬様を入社先企業に選択されたということは、女性が活躍しやすい、会社として共感できることが多々あったということでしょうか?

夏目敦子:代表取締役の富田が女性の活躍、これこそが会社の発展に繋がるという信念のもと、10年以上前から女性従業員の育成に力を入れていたからです。ここであれば自分も頑張れると思い、一緒に活性化していきたいと考えました。

また、前職にいた時から、女性従業員研修の講師という立場で関わらせていただいていました。研修に参加している女性陣も富田で成長し貢献したいという素直で真面目な方が多く、その人たちも大きな魅力でした。入社後も自分らしく働けているのは、トップをはじめ経営陣が男女区別なく活躍を期待していることが一番です。

中西昌子:経営陣が本気で女性の活躍を期待しているということ、それに対して具体的なアクションを取られて、育成しているということが、女性の管理職・役員を増やす一番大切な要素だと思いました。

松坂智美:政府も女性役員を2030年までに30%以上にするという目標を掲げるなど、女性管理職は今、日本社会に求められています。管理職になるのは難しいと思っている方も、夏目さんのお話を聞いて、自分も管理職を目指してみたい!と思われるきっかけになればと思います。

また、富田製薬様では、財務職、生産技術職、品質保証職などの募集をしています。ご興味をお持ちいただいた方はいつか徳島へのお問合せ、ご登録をお願いします。

コーナー2「仕事と子育てと両立しながら幸せに働くことを考える」

松坂智美:正解のない新しい働き方を女性の目線で考える「新しい働き方ラジオ」。次に、正解のない働き方の中で最も正解のないテーマ。「仕事と子育ての両立」について、富田製薬株式会社執行役員の夏目敦子さんと当番組スポンサー、ムツビエージェント株式会社代表取締役の中西昌子さんにお話を伺いました。夏目さん、中西さんよろしくお願いします。

夏目・中西:よろしくお願いします。

松坂智美:夏目さんは、お子さんも出産されて、育休なども取得されていらっしゃいましたよね。活躍されている女性管理職の方が、どのような環境で子育てされてきたのか気になります。教えていただけますか?

夏目敦子:ありがたいことに、職場環境、家庭環境、友人環境等すべてにおいて大変恵まれていたと感じます。当初では珍しく、会社の敷地内に事業所内託児所があり、授乳時間も2回/日いただけていました。ですので、お陰様で2人とも母乳で育てられました。また、託児所を通じて、社内の異部署間のママとも励ましあったり、助け合ったりすることで、仕事でのコミュニケーションもスムーズにいっていたように感じます。また実家が近くにあったため、子供の体調不良時や幼稚園に通い始めての送迎は、母がサポートしてくれていました。そして、このような環境を知っているママ友のみなさんにも、幼稚園・小学校終わりに子供を預かっていただいたり、一緒に遊びに連れて行っていただいたりと大変助けていただきました。

中西昌子:夏目さんが子育てをされていたころは、事業所内託児所を導入されている企業はとても珍しかったと思います。成長企業でもあるジャストシステムで経営者に女性もいらっしゃったとのこともあり、女性の活躍をサポートする職場環境だったのだと思います。

また、環境に恵まれたとのことですが、お母様からの支援を頂けるのも、お子様を預かっていただける良好な人間関係をママ友のみなさんと築かれていたというのも、働き続けるために実家の近くに住むという選択をされ、ママ友とのネットワークを作られたのも大変な努力だと思います。環境を自分で作っているという要素も大きいのではないかと思います。

夏目敦子:そうですね。困っているときは素直に言うなど、自分がこうしたいというのを、しっかり周りの方々に伝えて共有していきながら、理解者を増やしていくという点は心がけていたことではあります。

松坂智美:やはり、そういった環境面が整っていることが非常に重要な要素だと感じました。日本労働研究機構「育児や介護と仕事の両立に関する調査」によると、出産前後で会社を辞めた人の中で約3割が「両立環境が整わないこと等」を理由に辞めているというデータがあります。私は上の子が4歳、下の子が2歳で両立不能と判断し、辞めているので出産後もじわじわと離職者が出ている印象です。

恵まれた環境だったとのことですが、その中でも子育てとキャリアの両立で壁を感じることはありましたか?

夏目敦子:一番の壁は、時間だと感じました。女性にとって、やはり時間というものは大きいですね。20~30年前は、長時間勤務=仕事の評価という一面もありました。しかし、どうしても子育てには時間が必要なため、24時間を仕事と子育てに割り振らなければなりません。そういった時間の割り振り方というものに、思い悩みました。今のようなテレワーク等もなく、働き方の選択肢も少なかったので、会社で会議にでる、対面で業務を進めることが求められる時代には、時間が大きな壁でした。

松坂智美:そうだったのですね。壁を感じつつもどうやってそれを乗り越えてきたのでしょうか?

夏目敦子:はじめは、24時間+αの時間をどう生み出そうかとあがきましたが、どうあがいてもできないことを追いかけても仕方ない、変えることができないことを自分で理解しました。焦らず気持ちを切り替えて、その時期に時間の代わりに周りで認めてもらう物を探しました。育休中に秘書検定の取得や、英語にチャレンジしました。

また、当時の先輩ママ社員から、女性には仕事・家庭にかけられる割合がその時期によって変化するので、焦らず長い目で自分のキャリアを積んでいけばいいとおっしゃっていただきました。それを受け入れられてから、肩の力を抜いて自分らしく頑張れるようになった気がします。そして頑張れる時期には、人一倍全力で取り組み、周りへの信頼を得て、任せられる部下や理解者を1人でも多く作ることを意識しました。

松坂智美:この質問は子育ての当事者である中西さんにも伺いたいと思います。現在5歳の子の子育て中で、女性管理職=女性社長でいらっしゃいますが、仕事と子育ての両立に壁は感じますか?そしてそれをどう乗り越えますか?

中西昌子:そうですね。壁を乗り越えているかどうかは分かりませんが、私は夏目さんと少しパターンが逆でした。女性が仕事と家庭を両立することは難しいと思っていましたが、結婚も子育てをしたいと思っていましたので、自分がどんな環境であれば生涯働き続けられるのかと考えた時に、自由に働ける選択肢を得るために、若い時から起業という選択肢を持っていました。

そのため、若い頃はがむしゃらに働き、会社という基盤を作って、自由に働ける環境を得られたと思います。今は特にリモートワークもできますので、いつでも、どこでも働ける環境を作れたと思います。しかし、いつでもどこでも働いていると、体調など無理をしてしまう場面もあり、色んな手法はあったとしても、「時間」という点で限りなく厳しさというのは感じています。

また、夫も私の仕事に対する想いも理解してくれているので、自分を尊重してくれる人がパートナーであるということも大きいと思います。夫婦の両親とも近居ですので、子どものサポートをしてくれていて、私もとても恵まれた環境だと思います。

一方で、子育ては手間も時間もかかります。夏目さんがおっしゃる通り1日24時間しかない中で、子なしの時と同様に働くことは絶対にできません。特に、母親でしかできないことも、母親が子供に強く求められていることも子どもができて初めて理解できたと思います。0歳の時から子どもを保育園に預けていますが、5歳の今の方が、子どもに対して精神的なサポートがより必要だと感じています。そして、今後も成長に伴って子に必要なサポートがいろいろ生まれてくると思います。

結論的に、壁を乗り越えているかどうかはわかりません。現在は、状況に合わせて働く時間が変化しました。男性経営者を見ていると、羨ましいなと思うこともあります。奥さんが育児を担当し、ずっと仕事ができている方も多いと思います。そういった方と戦おうとすると、敵わない部分もあります。

しかし、その中でも自分以上に大切と思える子どもと出会うことができ、子どもの成長を見守れることは自分でも思ってもいないほどの幸福感を得ていると思いますし、それは生きること、仕事をすることへの原動力となっています。

働く時間は減ったかもしれませんが、今まで以上に健康についても栄養・睡眠・漢方などを取り入れ、仕事への集中力を高められるようにしています。また、組織としてどうすればパフォーマンスが最大化するのか、自分はどのような役目を果たすことが大切なのかということを自問自答するようにしています。色んな人に協力してもらいながら、最大のパフォーマンスを出せるのかということに、感情的にならずに自分の状況を把握して実行していくことで、壁を乗り越えようとしています。できないことを数えるのではなく、何ができるのかということを考え、実行することが大切だと思います。

松坂智美:そうですね。仕事と子育てが両立できなくて、女性管理職のキャリアを諦めてしまう方も多いと思うので、そのキャリアを実現されているお二人の意見は本当に参考になります。

中西昌子:夏目さんは、「県内外の企業と連携して、女性のロールモデルの増加、女性管理者の育成を目指したい」とおっしゃっていましたが、今後どのように取り組んでいきたいとお考えですか?

夏目敦子:そうですね。コロナ前に実施していた、県内企業で連携した女性研修(懇親会)を復活させたいですね。その中で、県内外で活躍されている女性社長、管理者の方々の経験・お考えを聞くことで、様々な人の経験を通じて、自分の管理者像をイメージしてもらえます。この人がこういう時に乗り越えたのなら、私もチャレンジしてみようといった不安払拭や、前を向ける機会になれたらと思っています。

また、同じ意欲や不安を持つ女性同士が本音で話しあうことで、横のつながりを持って、仲間意識や自信を持ってもらいたいと考えています。こんなに悩んでいるのは自分一人じゃない、周りも同じように悩みもがいているということに気付き、しかし、それを乗り越える方法はたくさんあるということを知ってほしいです。

また、男性にも懇親会に参加していただき、女性の思いを知ったうえで、どういったことをサポートすれば、組織または徳島県を盛り上げていけるのか、といった点について理解してもらえるような機会にもできたらと思っています。

松坂智美:ありがとうございます。子育て環境は、家族構成、パートナーのスタンス、パートナーの会社の人事制度にわたり、非常に再現性が難しいテーマではあります。しかし、子育ての当事者の女性の意見を聞くのは本当に参考になります。お二人の話を聞き、やはり適切に頼っていくということ、困っていることを発信するということが大事であると学ばせて頂きました。

引き続き当番組では働く女性のキャリアインタビューを通して、女性の目線で新しい働き方について探求してまいります。

夏目さん、中西さん本日はありがとうございました。

夏目・中西:ありがとうございました。

松坂智美:正解のない新しい働き方を女性の目線で考える「新しい働き方ラジオ」。本日は、富田製薬株式会社執行役員の夏目敦子さんにご登場いただき、女性管理職になる魅力と子育てと仕事の両立についてお話しをしてまいりました。

富田製薬様の求人はいつか徳島のサイトに掲載されています。ぜひいつか徳島と検索いただき、お問合せ、ご登録をお願いします。

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