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人手不足の背景を理解し、新たな人事戦略を立案する第一歩を。第一章:人手不足の背景を理解する

人手不足が続く中、初任給引き上げやベースアップで採用力を強化する大手企業、ベンチャー企業が増えてきました。

リモートワークが浸透する中では、「親元に帰るため、Uターンせざるを得ない」という人材も転職なき移住によって、徳島の企業の採用チャンスがじわりじわりと減ってきているように感じます。

また、働き方改革も浸透し、人材の意識も大きく変化しています。その意識の変化をとらえきれない企業は、離職が増える、採用が難しくなるといった問題も出てきているように感じます。

以前より格段に採用の難易度が上がる中、どのような対策が必要なのか、徳島の企業が目指すべき方向を考え、少しでも徳島の企業の採用力アップにつなげていただきたいと思っています。

今回のコラムでは、まずは、人手不足が起きる背景をお伝え致します。
3部構成でお送り致しまして、最終的には徳島の企業が目指す方向をご提示できればと考えています。私にとっても大きな難問にもなりますが、徳島の企業が必要な人材を確保し、企業の継続、成長を続けるためにも、皆様と一緒にこの課題に取り組んでいきたいと考えています。

人口減少及び生産年齢人口の減少期

皆さんもご存じだと思いますが、日本の人口は減少しています。
日本の総人口は、2008年の1億2,806万人をピークに減少を続け、 生産年齢人口(15歳~64歳)は、1995年の約8,700万人をピークに減少に転じています。
2030年の生産年齢人口は(15歳~64歳)は6,773万人とピーク期と比較すると1927万人と約22%も減少する見込みとなり、急速に生産年齢人口が減少していることが理解できると思います。

(出典)2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を除く)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計)

人口構成比

それでは、2022年1月段階の人口構成比を見てみましょう。

全体における人口の比率も算出してみました。
50~59歳は13.7%
45~54歳は15.2%
35~44歳は11.8%
25~34歳は10.3%
15~24歳は9.4%
と、45歳から54歳をピークに、10年ごとに人口が大幅に減少していく様子が見て取れます。
10年違うと、採用できる人材数が激減している状況です。新卒採用を長くされている人事の方ほど、採用が容易だった時代の意識が残っているため、「なぜ、今こんなに採用が難しいのか?」と疑問に感じやすいようですが、1年ごとに採用難易度が高まっている状況となります。

徳島の高齢化率

全国平均年齢は、47.3歳。徳島県は、全国8位の高齢化率で全県平均は、49.0歳。
藍住町、北島町、松茂町、徳島市、阿南市、石井町、小松島市、鳴門市、板野町、上板町は平均年齢が40代ですが、三好市、海陽町、佐那河内村、つるぎ町、美波町、那賀町などは50代後半が平均年齢。神山町や上勝町は、60代が平均年齢となります。

もちろん限界集落といわれる地域でも、新たな取り組みを行い、若手人材の移住や流入も増えていますが、一般的な企業の採用においては、やはり若手人材の確保難易度が高いと言わざるを得ないのではないかと思います。

求人倍率からみる企業間格差

若手人材が希望する企業とそうでない企業つまり企業間格差が広がり続けています。
有効求人数÷有効求職者数で算出した有効求人倍率でご確認いただくと、 リクルートワークス研究所が調査した、2023年3月卒業予定の大卒求人倍率をご覧ください。

■従業員別求人倍率

■業種別求人倍率

従業員規模が5000人規模の会社は、求人倍率が0.37倍と企業優位の採用ができる一方で、
従業員規模が300人未満の企業は、求人倍率が5.31倍と1人の求職者に対して対して企業5社が手を挙げている状況です。

加えて業種別でみると、金融やサービス・情報の求人倍率は常に1倍を切っていますが、建設業、流通業においては求人倍率が7.7倍となっています。

企業の規模、業種において圧倒的な企業間格差が開いている状況です。企業規模の小さな企業が多い徳島や業種としても建設業等が多い徳島は、ますます採用に不利な状況になっています。

各社の採用戦略

それでは、各社の採用戦略も見てみましょう。
初任給引き上げがよくニュースで取り上げられていましたが、話題性を集めることが得意なファーストリテイリングやサイバーエージェントは大幅な初任給アップを行っています。
ファーストリテイリングは、初任給も現在の25万5000円から30万円にアップ。23年春から、初任給を従来の34万円から42万円に引き上げとなっています。

ベンチャーやゲーム業界など、人材獲得競争が激しい業界も初任給アップ幅が大きいことが特徴です。一方、製造大手企業も初任給引き上げを行うが、大幅アップとまではいかず5000~1万円程度となっています。

徳島の企業でもニュースになっていた企業様を探してみました。2023年3月に、徳島県の金融機関様が基本給を底上げするベアを嘱託やパートタイマーを含む全従業員約1300人の平均で4.2%を予定し、2024年4月の新入行員から初任給も2万円引き上げるようです。

また、勤務地のしばらいのないリモートワークも大手企業を中心に始まってきました。転勤やUターンなどでの離職を防ぐ目的や地方にいる優秀な人材をリモートワークによって獲得を目指す動きもあるようです。今まで採用ができていた、親の介護やUターンのために徳島へUターン転職をしていた人材の採用難易度が高まってくることを予測しています。

~参考~
●Yahoo!
社員一人ひとりのニーズにあわせて働く場所や環境を選択できる人事制度「どこでもオフィス」を導入。130名以上の社員が飛行機や新幹線での通勤圏へ転居(※1)したことや、東京オフィス所属の社員のうち約400名が1都3県以外の地域へ転居。
※九州地方(48%)に次いで、北海道(31%)、沖縄県(10%)
新制度の発表・導入前である2021年と比較すると、新制度開始後、中途採用の応募者数は1.6倍に増加。コミュニケーション不足を補う、社員間で行われる懇親会の飲食費用を補助する「懇親会費補助(5,000円/月)」を支給。

●NTT
リモートワークを基本とする新たな働き方を可能とする制度を導入。転勤や単身赴任を伴わない働き方を拡大。
※制度開始当初は主要会社本体社員の約5割程度が対象と想定
・勤務場所は「社員の自宅」とする(会社への通勤圏に居住する必要は無し)
・リモートワークと出社のハイブリッドワークを前提(出社時の交通費は支給)
社員本人の希望や業務内容に応じ、個人単位での適用や適用除外も可能

そして、極めつけが週休3日制の導入です。

以下が週休3日制を導入した企業になります。

ナレッジソサエティ、 佐川急便 、日本マイクロソフト、Zホールディングス(旧:ヤフー) 、ユニクロ、日本KFCホールディングス、日本IBM 、アルペン 、トットメイト 、ウチヤマホールディングス 、クリエイティブアルファ、DHコミュニケーションズ 、Blanc 、サタケ 、ファミリーマート、 600、 イートアンド、 信州ビバレッジ 、TOKYO BIG HOUSE、 元湯 陣屋、 電通 、東邦銀行 、SOMPOひまわり生命、 大和ハウス工業 、ヤマト運輸、 プリモ・ジャパン、 スパイシーソフト 、味の素AGF、 シノケングループ 、ネクストビート、 みずほフィナンシャルグループ、 スカイマーク、 オリコ 、東芝 、ワコール、 リクルート、 塩野義製薬、 日立製作所、 こどもの森、 オムロン、 株式会社ワークスアプリケーションズ 、TRASP株式会社 、立石コーポレーション、 株式会社オロ 、神谷コーポレーション湘南株式会社、 昭和電機株式会社 、インターリンク株式会社 、株式会社アジャイルウェア 、株式会社LIFULL 、株式会社AXSデザイン 、アネスト岩田株式会社 、メタウォーター株式会社、 株式会社Timers オンタイムデリバリージャパン株式会社、 株式会社カオナビ、 株式会社ロフトワーク 、株式会社シグナルトーク

2021年に日本政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」に「選択的週休3日制」が盛り込まれたことが発端してスタートしました。週休3日制を推進することで、ワークライフバランスの尊重や新たなスキル習得、いわゆるリスキリングや副業推進の目的に加えて、採用を優位にしたい企業の考えがあります。

「初任給大幅アップ」「リモートワークでどこでも働ける」「週休3日制」と今までにない待遇を用意する企業と、今までと大きく条件が変わらない企業との採用競争力の格差がますます開いている状況となっています。

まとめ

日本の総人口が減少し、生産年齢人口が減少し、45~49歳をピークに若年人口は減少傾向を続けています。

企業と人材のミスマッチは、企業が求める人材と日本社会における人口のボリュームゾーンが合致しなくなっているという問題が大きくあると思います。特に、正社員として企業が今まで求めてきた人物像については、採用競争が激化し、より給与が高い企業や福利厚生、企業としての魅力が高い企業に争奪される可能性が高くなっています。

【競争が激しい人材層】
・特に新卒者
・20代~30代
・男性もしくは出産の予定がない女性、子育てなどで負荷が高くない女性
・残業の対応が可能、ないしはフルタイムで働ける
・新卒で入社できるもしくは、職歴がきれいな中途人材
・即戦力である(何らかの技能を持つもしくは、即戦力が期待できるポテンシャル)

東京商工リサーチの2023年4月17日に発表した全国の企業を対象とした「人手不足」に関するアンケート調査によると、全体の66.5%が正社員不足と回答し、従業員の多い大企業では73.2%もの会社が人手不足と回答しています。

大手企業は今まで新卒採用で人材を確保してきましたが、中途採用の人材も積極的に採用するようになってきました。転職者を確保することで、人材を補ってきた中小企業は、新卒も中途採用も非常に困難な状況になってきています。

それでは、来月のコラムの第二章では働く人の意識の変化についてご紹介したいと思います。

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