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大手企業を離職する優秀な人材を、中小企業が採用できるチャンスがあるのか。

とある求職者から、
「安定した勤め先ですし、制度も魅力的なのですが、今の職場で働き続けることについて悩んでいます」とのご相談を受けました。

彼女は、徳島にご縁のある方で、都心の大手企業での勤務を経て、徳島へUターン転職をされています。
徳島での勤務先は、彼女の第一志望の転職希望先でした。非常に安定した勤め先なので、家族みんなが入社を喜んだそうです。

働く環境はとても恵まれているはずなのに、なぜ、退職を検討するようになってしまったのでしょうか。

そもそも彼女は、都心での成長企業の勤務経験を持つ、専門的なスキルを身に着けた非常に優秀な人材です。
にも関わらず、専門的な仕事は担当させてもらえず、今後の配属も明確ではないということが分かったそうです。
また、その企業独自のルールが複数あり、転職組には、理解しがたく、苦痛に感じるレベルだそうです。
「新卒で入社していれば、そういうものか、と受け入れられたかもしれない」とも言っていました。

大手メガバンクでも「優秀な人材(若手)」の離職が大きな問題となっています。
そこで、今回のコラムでは、大手安定企業でも若手の優秀な人材が離職する理由を考えたいと思います。

そこを紐解くことで、中小企業が優秀な人材を採用できるチャンスがあるのではないかと感じています。

まずは、私が最近読んだ記事の一部を参考資料とさせて頂きます。

みずほフィナンシャルグループは、2018年の新卒採用で「みずほらしくない人に会いたい」というキャッチフレーズを掲げて採用を行っていた。融資中心のビジネスモデルから転換を図るうえで、過去の内定者には少なかった、協調性は低くとも変革力のある人材の獲得に本腰を入れることが狙いだった。
その他にも、「グローバル」「理系」などのキーワードも掲げ、みずほの従来の風土を打破しようとしていた。

特に、コース別採用として、通常の総合職が345人に対して、花形部署である大企業向けの法人営業部に配属される「グローバルコーポレートファインス(GCF)コース」に採用されるCBと呼ばれる社員は30名程度しかいないが、年度によっては、その花形部署の半数近くが辞めた世代もあるそうだ。

その理由の一つが、「当部若手行員としての心構え」という手引書にあるという。
その手引書には、CB若手行員に対する批判、CBのいいところ、心構え、という3つの項目がある。

多少は生意気でも、個性豊かな人材を採るという方針であったにも関わらず、その手引書には、「実力がないのに根拠のない自信家が多い」「ほかの若手行員を見下している」「挨拶をろくにしない」といった厳しい内容が書かれているそうだ。


参考URL:≫ 銀行脱出をコロナ禍中に決めたメガ行員の本音「在宅勤務なんて無理だ!」

社風と合致しない人材を採用することの難しさ

「みずほらしくない人に会いたい」というキャッチフレーズで今の社風にはいないような人材を集め、「みずほは大きく改革をしているから、こんな風にあなたが活躍できる場所があるのですよ」「あなたに大きな期待をしているのですよ」と口説き落としたのだと思います。

しかし、「実力がないのに根拠のない自信家が多い」「ほかの若手行員を見下している」「挨拶をろくにしない」という批判がされていることからみると、新入行員として身に着けるべきことを身に着け、礼儀作法を大切にしたうえで、変革性を発揮しろ、という声が聞こえてくるようです。

特に、今回のみずほさんで優秀な人材が大量に離職したケースで考えると、あなたのような特性の人に来て欲しいんだ、と口説いたにも関わらず、その特性を否定する環境だったとするならば、大量の離職につながることは、ある意味当然の結果だったと思います。

離職につながりやすい採用を積極的に行う環境

時代が大きく変わる中、新卒・中途では今まで社内にいないような人材を採用する動きが新卒採用を中心に行ってきた大手企業を中心に盛んになっています。

しかし、「会社を変えるような人材を採用するのだ」という高い目標を持って、採用をしても、少数の若手社員(特に新卒社員)では、会社を変えるほどの力はありません。

結果、採用まで至っても人材が定着しにくく、若手の離職が相次ぐ現象が起きているのだと思います。だからこそ、大手企業から離職する優秀な人材を、中小企業が採用できるチャンスにもつながるのではないかと思います。

社風や制度を変えやすい中小企業にこそ、優秀な人材を採用するチャンスがある

中小企業も社歴が長いと、大手企業と同様に会社独自の社内ルールがあることでしょう。
しかし、そのルールを変えることができるのであれば、大手企業から離職した変革性、自主性、創造性などの特性を持つ優秀な中途人材を採用できるチャンスがあると思います。

・現在の給与制度にとらわれない給与提示
・仕事内容を明確にした、専門的な業務に専念しやすい環境提示
・性別、年齢にとらわれずスキル・経験を重視した選考
・男女問わず産休・育休、有給休暇が取れる
・時短勤務、フレックスタイム制などの柔軟な勤務時間の提示
・会社の独自ルールの撤廃

このようなことが導入できれば、大手企業のがんじがらめのルールに嫌気をさした人材の採用が実現する可能性がぐっと高くなのではないかと思います。「会社を変えてくれるような人材」を迎え入れるためには、会社自体を変えていく必要もあります。
そして、中小企業こそ会社を変える柔軟性があるのではないかと思います。

若手人材に頼らず、似たタイプの人材を採用する

また、あえて若手人材の採用に固執しないという考え方もあると思います。

徳島のとある企業様でお聞きしたお話です。
業績は、この10数年来右肩上がりで、特に利益率が高く、収益性がアップするに伴い、年間休日も増やし続けているそうです。

その企業は、新卒採用は一切行わず、40代以上の人材採用を積極的に行っているそうです。ピラミッド型の組織にこだわらず、年齢層が高いまま推移する人員構成になっているようです。定年退職する人材がいても、また40代以上の年齢層の人材の採用を続けることで、若手がいないことへの不便を感じていないそうです。

ただし、どんな人材でも受け入れているわけではありません。営業人材であれば、同業界出身の人材にこだわって採用しているそうです。顧客を連れて来てくれるし、ある程度「あ、うん」の呼吸で仕事ができるそうです。
また、教育も必要がないので、教育の時間やコストがかからないし、不平不満をあまりおっしゃらないそうです。
そこには、40代以上の方が納得するような一定金額を提示した年俸制にしていることも入社後活躍いただける理由なのかと思います。近しい年代の人材が集まっているので、価値観が違うことでのトラブルが起きにくいようです。

また、繁忙期には期間パートを採用するそうですが、勤務時間を10時~16時、平日のみとしていることで、優秀な女性がたくさん集まり、人材採用には困っていないそうです。

正社員の若手人材や会社を変えるような人材などにこだわらず、自社の利益に直結する人材はどのような人材なのかを改めて見直す重要性を教えてもらいました。

そして、今ある社風や独自のルールが本当に意味のあることであれば、それを大切にできる人材を採用していくことも正しい採用の一つだと思います。

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