前回のコラムでは今まで必要とされてきた「採用力」についてご紹介させて頂きました。
以前は採用広報力があれば採用は比較的、採用成功がしやすかったのですが、現在の採用力(採用競争力)は、採用広報力×待遇×企業力の3つの要素の総和が採用力となっているということ。今は待遇や企業力も非常に重要な要素になっていることをお伝えさせて頂きました。
今回のコラムでは、2020年以降の採用活動について求められる「採用力」に必要な新たな要素についてご紹介させて頂きます。
2017年以降変化してきた労働者の意識
2019年11月に、徳島大学にキャリア講義で授業を行う中で、学生に「どのような会社で働きたいですか?」という質問をしてみました。
「給与の良い会社」「安定している会社」「規模の大きな会社」「福利厚生がしっかりしている会社」という回答に加えて、
● パワーハラスメントのない会社
● ワークライフバランスがとれる会社
● 労働時間がきちんとしている会社
● 休日がきちんと取れる会社
という回答が複数上がってきました。
私自身、就職氷河期世代といわれる世代でしたが、この厳しい社会でどうにか生き延びるために、長時間労働を厭わず、むしろ長時間労働は自己成長ができる機会と捉え、長時間労働を前向きに行っていました。
しかし、今どきの若者は、長時間労働の果てに過労死をしてしまう人、会社でパワーハラスメントをされて自殺をしてしまう人などの事件を知る中、「自分自身を守れる会社」かどうかを企業選びの最低限の基準とするようになってきたようです。
<記憶に新しい事件>
・2008年・・ワタミの女性従業員の「長時間労働」での過労自殺
・2014年・・深夜時間の営業を従業員1人に任せる(いわゆるワンオペ)など、過酷な労働環境が問題
・2017年・・に東大卒の電通社員が「長時間労働」「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」で自殺
1980年代~1990年代の過労死や労働関連での自殺は40~50代の男性に多かったと思いますが、最近の過労死や労働トラブルの被害者は、新卒入社などの若者であったり、女性であったり、社会的弱者のケースが多いことが特徴です。
つまり、自分自身の身を守るために、労働時間が適切で、ハラスメントがなく、自分の人生を送れると感じる企業へ入社したいと考えるようになったのだと思います。
そのため、「ブラック企業っぽい会社は絶対に嫌。ホワイト企業で働きたい」という若者がとても増えてきました。
自分の身を守るためには大切な視点ですが、仕事本来の魅力よりも職場環境を優先せざるを得ない社会構造になってしまったことは、とても残念なことだと思います。今の世代の若者たちが仕事や未来に、夢や希望を持てるような世の中に変えていかなければならないのではないかと感じています。
これから求められる企業に必要となる「モラル意識」
「ブラック企業っぽい会社は絶対に嫌。ホワイト企業で働きたい」という意識の高まりから、学生は企業の「モラル意識」を非常に重視するようになっています。
その中でも、パワーハラスメントと長時間労働に対する嫌悪感は非常に高く、加えて、企業からブラックっぽさを感じとる能力も非常に長けていると感じます。
例えば、「毎月、バーベキューを社員と社員の家族も含めて行っています!」という内容からもブラックっぽさを感じ取るのが最近の若者です。プライベートな時間を強制的に会社に拘束されている、と感じたり、家族がいない独身者などが独身ハラスメントに合うのではないかと、感じるのです。
「弊社は成長を感じる企業です!お客様のために徹底したサービスを行っています!」という
いわゆる一般的に感じる言葉からも、お客様サービスのために、社員自身の労働が搾取されていないか?と疑うのです。
そのレベルでブラック企業と思われるのか?!と思われるかもしれませんが、今どきの若者は
長時間労働をしても、中々、給料の上昇が見込めず、終身雇用制度も崩壊しているということを理解しいているのです。そのため、無給で働くことや無給で自分自身の時間を拘束されることを極端に嫌っているのです。
若い人材を採用する必要がある企業は、今どきの若者の意識を理解し、「モラル意識」を高める必要があると感じます。若者は労働基準法を非常に良く理解しています。
そのため、今後、企業は「モラル意識」を高めるために、以下の2点を経営陣・人事で徹底的に行う必要があるのではないかと思っています。
・ハラスメント(パワハラ・マタハラ)への理解や対策
・労働基準法の理解や遵守
今後の採用競争力は、企業の【モラル意識】が重視されるようになるでしょう。
という方程式となる中、ハラスメント対策、労働基準法の遵守は必須です。
採用力の高い企業は、優秀かつ多様な人材を確保するために、様々な制度を積極的に取り入れています。長時間労働が可能な人材以外も積極的に採用することで、優秀な人材の流出に歯止めをかけ、優秀な人材の採用にも繋がっています。
また、その結果、働きやすい職場づくりを実現していると感じます。
<採用力の高い企業が行っている施策>
● 労働時間の適正な管理
● 時間外労働への適正な支払い
● 業務効率化による残業時間の短縮
● 産休・育休取得の奨励
● 時短勤務の奨励
● 有給休暇取得の奨励
● 在宅勤務の導入
● フレックスタイムの導入
● ハラスメントの無い職場づくり
人材不足の中で、上記のような施策を取ることは難しい、とおっしゃるお声も良く聞きます。
しかし、人材不足だからこそ、一人ひとりが自分の希望にあった働き方が実現し、プライベートな時間を確保できる働き方を実現することが、働き手の確保に繋がると感じています。