2024年改訂の最低賃金が決定し、徳島県では新たに決定した最低賃金980円が2024年11月1日より適用される予定です。
徳島の最低賃金は、全国でも過去最大の引き上げ額84円の9.4%増となり、四国内では最も高い最低賃金額、全国順位では27番目に高い最低賃金となりました。
徳島県の最低賃金の異例の引き上げ額84円は全国的にも話題となり、徳島からの人材流出を防ぐカギとなることが期待されています。
2024年の徳島県の最低賃金が全国で過去最大の引き上げ額となった背景
2022年では、徳島県の最低賃金は全国33位の855円。2023年の徳島県の最低賃金は全国ワースト2位の896円となり、大きく順位を下げてしまいました。
その理由は、2023年の最低賃金引上げにおいては、徳島県は国が定める基準値40円にプラス1円の上乗せ額を設定していましたが、他県では国が定める基準値に最大プラス7~8円の上乗せ額を決定したため、大幅な遅れをとることとなったのです。
参考コラム:
<2023年10月改定の最低賃金>徳島が昨対41円のアップをしたものの、全国順位を大きく下げた理由とは。
https://itsuka-tokushima.co.jp/career_advice/minimum-wage/
そのため、現状に危機感をもった後藤田県知事が
「全国で下から2番目の最低賃金では人材の県外流出が止まらない」とし、徳島地方最低賃金審議会や徳島労働局に最低賃金を千円超に引き上げるよう要請。特に、徳島県の経済的立ち位置からあるべき賃金を探る新方式を提案しました。
徳島県は一人当たりの県民所得が全国8位。とするならば、徳島は全国中位より上と考え、2023年の全国中位にあたる930円が本来であったとし、国の目安の引き上げ額50円を採用し、980円にするべきだと。そして審議を何度も重ねる中、2024年の徳島県の最低賃金は980円、全国順位が27位となりました。
全都道府県別の最低賃金額から見る今後の動きの予測
それでは、全国の動きも考察してみましょう。
国が定める引き上げ額の基準値50円に対して、上位1位~13位の県は大阪府のプラス1円を除き、基準値50円の賃上げにとどまっています。
中位である14位~32位は、基準値50円に対して上乗せなしの0円~は7県、プラス1円は5県、プラス2円は2県、プラス3円~7円が3県、そして徳島のプラス34円となりました。
下位である34位~47位は、基準値50円に対してすべて上乗せを行い、プラス4円が2県、プラス5円が7県、プラス6円が3県、プラス9円が2県となりました。
総合すると、上位県は国の基準値通りで必要最低限の賃上げにとどめ、下位県は中位ないしは平均を目指した賃上げを行い、低位からの脱却を目指す動きが見られました。
順位 | 都道府県 | 引上げ率 | 改定後の賃金 | 改定前賃金 | 引き上げ額 |
1 | 東京都 | 4.5% | 1,163 | 1,113 | 50 |
2 | 神奈川県 | 4.5% | 1,162 | 1,112 | 50 |
3 | 大阪府 | 4.8% | 1,114 | 1,064 | 51 |
4 | 埼玉県 | 4.9% | 1,078 | 1,028 | 50 |
5 | 愛知県 | 4.9% | 1,077 | 1,027 | 50 |
6 | 千葉県 | 4.9% | 1,076 | 1,026 | 50 |
7 | 京都府 | 5.0% | 1,058 | 1,008 | 50 |
8 | 兵庫県 | 5.0% | 1,052 | 1,001 | 50 |
9 | 静岡県 | 5.1% | 1,034 | 984 | 50 |
10 | 三重県 | 5.1% | 1,023 | 973 | 50 |
11 | 広島県 | 5.2% | 1,020 | 970 | 50 |
12 | 滋賀県 | 5.2% | 1,017 | 967 | 50 |
13 | 北海道 | 5.2% | 1,010 | 960 | 50 |
14 | 茨城県 | 5.5% | 1,005 | 953 | 52 |
15 | 栃木県 | 5.2% | 1,004 | 954 | 50 |
16 | 岐阜県 | 5.4% | 1,001 | 950 | 51 |
17 | 富山県 | 5.3% | 998 | 948 | 50 |
18 | 長野県 | 5.3% | 998 | 948 | 50 |
19 | 福岡県 | 5.4% | 992 | 941 | 51 |
20 | 山梨県 | 5.3% | 988 | 938 | 50 |
21 | 奈良県 | 5.4% | 986 | 936 | 51 |
22 | 群馬県 | 5.3% | 985 | 935 | 50 |
23 | 新潟県 | 5.8% | 985 | 931 | 54 |
24 | 石川県 | 5.5% | 984 | 933 | 51 |
25 | 福井県 | 5.7% | 984 | 931 | 53 |
26 | 岡山県 | 5.4% | 982 | 932 | 50 |
27 | 和歌山県 | 6.1% | 980 | 929 | 57 |
28 | 徳島県 | 9.4% | 980 | 896 | 84 |
29 | 山口県 | 5.5% | 979 | 928 | 51 |
30 | 宮城県 | 5.4% | 973 | 923 | 50 |
31 | 香川県 | 5.7% | 970 | 918 | 52 |
32 | 島根県 | 5.5% | 962 | 904 | 50 |
33 | 鳥取県 | 6.4% | 957 | 900 | 58 |
34 | 愛媛県 | 6.6% | 956 | 897 | 59 |
35 | 佐賀県 | 6.2% | 956 | 900 | 56 |
36 | 山形県 | 6.1% | 955 | 900 | 55 |
37 | 福島県 | 6.1% | 955 | 900 | 55 |
38 | 大分県 | 6.1% | 954 | 899 | 55 |
39 | 青森県 | 6.1% | 953 | 898 | 55 |
40 | 長崎県 | 6.1% | 953 | 898 | 55 |
41 | 鹿児島県 | 6.2% | 953 | 897 | 56 |
42 | 岩手県 | 6.6% | 952 | 893 | 59 |
43 | 高知県 | 6.1% | 952 | 897 | 55 |
44 | 熊本県 | 6.0% | 952 | 898 | 54 |
45 | 宮崎県 | 6.1% | 952 | 897 | 55 |
46 | 沖縄県 | 6.3% | 952 | 896 | 56 |
47 | 秋田県 | 6.0% | 951 | 897 | 54 |
大幅な上乗せを行う他県でも一桁台にとどまる中、徳島県の34円の上乗せは「徳島ショック」という造語も生まれ、とある経済団体の会長が徳島の動きが過度な競争を引き起こす恐れがある、との批判の声明もあげました。
しかし、2023年にも国の定める基準値に加えて、都道府県独自の上乗せは行われていますし、違法性はありません。今回の最低賃金の大幅な引き上げを競争とするならば、既に始まっていた競争に徳島県が大敗していたなかで、ようやくスタートラインに立ったともいえます。
そして、各県も平均・中位を目指した動きを取ることで、物価上昇に合わせた正常な賃金が行われ、物価上昇率に合わせた賃金が働く人に支払われることで、安定した生活を営めることこそが、経済活動の後押しにもつながるはずです。
徳島県の最低賃金の順位があがることで何が変わるのか
徳島県の最低賃金が低いことにより、企業誘致の原動力や、企業経営にとっては人権費を抑止できるプラスの効果もあったかもしれません。
しかし、最低賃金が全国的にも低いという事実は、多くの労働者にとっては生活の豊かさにつながらず、また徳島県で生きたい、働きたいという気持ちを削ぎ、徳島への愛着心や誇りを奪いかねないことだとも思います。
徳島県で生きる、働く喜びや誇りを持てること。そして、徳島県知事がいうように、徳島県の人口流出に歯止めがかかることを期待したい思います。
2024年11月~の徳島県の最低月給額とは?
それでは、最低賃金が980円の場合、月給や年収はどの程度の額になるでしょうか。
「2024年度徳島県の最低月給・年収賃金額の早見表」を作成しましたので、ご参考にご覧ください。
2024年11月に改訂される徳島県の最低賃金980円をもとに、1日の就労時間を8時間として計算。年間休日別に試算した月給・年収を表にまとめています。条件等によって異なることもあると思いますので、目安としてご活用いただければと思います。
2024年度徳島県の最低月給・年収賃金額の早見表
年間休日 | 最低賃金980円 目安での月給 | 最低賃金980円 目安での年収 |
100日の場合 | 17万3,133円 | 207万7,600円 |
105日の場合 | 16万9,866円 | 203万8,400円 |
110日の場合 | 16万6,600円 | 199万9,200円 |
115日の場合 | 16万3,333円 | 196万円 |
120日の場合 | 16万66円 | 192万800円 |
125日の場合 | 15万6,800円 | 188万1,600円 |