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増えつつある男性の見えにくい退職理由

私たちが転職相談を受ける中で、男性の退職・転職理由に「結婚を機に、働く環境を変えたい」「家族や子育てのために転職をしたい」というものが増えてきました。

女性が結婚や子育てを理由に退職をされるのは、定番ともいえる理由だったかと思いますし、「男性を採用したい」とお考えになる企業様の多くは、「出産や育児がなく、長時間労働にも耐えうるかつ長期的な勤務が可能で、転勤を厭わない男性」が良い、というお考えが主流だったのではないかと思います。

しかし、その男性が結婚や出産を機に退職するようであれば、現状を見直す必要があるかもしれません。ではなぜ、『結婚や出産を機に男性が退職を考えるようになったのか』を掘り下げてお伝えしたいと思います。また、その対策も考えてみたいと思います。

 共働き世帯の増加

言うまでもありませんが、共働き世帯が増加しています。
下記のグラフの通り、平成9年以降は共働き世帯数が男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を上回るようになりました。

こちらを見ると、女性活躍推進も進んできたのだな、と思われるかもしれませんが、「ワンオペ育児」「保育園落ちた、日本死ね」などの言葉が使われ、子どもを持つ女性が現状の環境に前向きな状況にあるかというと、そうは感じることが出来ません。
もう少し詳しくデータを分析したいと思います。

出産後、本当に女性は働きやすくなったのか

育児休業取得率からまずは考察したいと思います。
2017年度の女性の育児休業取得率は年々上昇し、育児休業の取得率は女性83.2%となりました。

育児休業取得率が1996年度から比べると飛躍的に上昇していますし、この数字だけ見ると女性が出産後働き続ける共働きの環境が出来ている…とお感じになるかもしれませんが、実は、そうではありません。

育児休業取得率の計算方式は、
育児休業取得者数 ÷ 出産した社員数 ×100
となります。
※育休取得率の対象となるのは無作為に抽出された正規、非正規を含む5人以上の従業員がいる民間事業所

つまり、出産した社員数が母数なので、育休を取得せずに辞めた人数は含まれていません。
逆に、育休を取得せずに働かれている女性が20%もいるということになります。

その20%の中の方には、人によって事情も違うと思いますが、育児休暇については法律によって取得義務の定めはありませんので、早期に復職しないと会社を辞めざるを得ない、ないしは、自分の希望の部署に戻れない、という問題などが多いのかもしれません。

そして妊娠をした女性の全体の約7割が「妊娠を契機にして退職」をしているというデータがあります。私たちも転職活動の支援をしていますが、小さいお子様を抱えての転職活動は相当に難しく、多くの方が、パートや派遣などの時間給で働き、正規雇用で採用を頂くことは厳しい状況です。正社員で勤務していた方が妊娠を契機に退職した場合、次の職場は以前の職場よりも給与が下がってしまうケースがほとんどになります。

そういった状況を理解できず、妊娠期に早まって退職される女性も少なくないのかもしれませんが、女性が妊娠中に勤務を継続することが難しく、また、産後に仕事と家事・育児の両立が難しく感じられるのが、現在の多くの妻の職場の現状であり、夫の職場の現状なのだと思います。

やる気があり能力の高い女性が辞めていくようであれば、非常に残念なことだと思います。さて、次いでは男性の意識の変化を考えたいと思います。

 男性の育児への意識の変化

そういった中、夫は妻が今の仕事を辞め、家事や育児に専念することを望んでいるのか?というと、男性の意識も徐々に変わってきています。

妻が仕事を辞めると、家族全員を養う責任が夫の方一つに掛かってきます。
終身雇用制度が崩壊し、年功序列で昇給する見込みが見えない中、妻にも家計の一翼を担って欲しいと考える男性が増えてきているようです。

厚労省の統計調査によると20~30代の独身男女の約8割が「共働き」を希望しているという結果になっています。男性が共働きを希望する理由として、経済的な理由もありますが、妻にも仕事を通した充実感を味わって欲しい、今まで磨いてきたスキルを活かして欲しいなどの理由もあるようです。

つまり、妻が出産しても、働き続けて欲しいと前向きに願う男性が増えてきているということです。そのため、妻が出産後も安心して現職で勤務を続けられるように、家事・育児も担いたいと考える男性も増えてきているということです。そのため、残業時間が月何十時間も超えたり、休日が少ない企業での勤務が難しいという判断となり、転職を考えるようになっているようです。この1~2年で圧倒的に増えてきた、男性の転職理由です。

 男性の残業時間の削減と休日取得の推奨

男性でも「24時間働ける」と考える企業様は、少なくなってきていると思いますが、男性を、出産や育児には関係ない存在と考えることは、もはや難しくなってきていると感じます。

男性も女性と同様、家事や育児に参加したい方は増えてきていますし、そういった方は考え方がフラットで、仕事も良くできる方だという印象があります。男性の残業時間の削減、休暇取得の奨励は男性の離職率低減に大きな効果を発揮するのではないでしょうか。また、男性が家庭参加できる職場環境であることを伝えることは、採用面においても大きな効果を発揮すると感じます。

男性は「残業して当たり前!」の職場から、男性も残業を減らして家事・育児参加が出来る環境づくりをぜひ目指して欲しいと思います。

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