Column 経営者・人事向けコラム

AI時代の採用の行方【後編】徳島の企業に大切にしてほしい採用活動の指針

初任給のインフレが起き、新卒採用の難易度が高まっています。一方で、ホワイトカラーにおいては欧米などではすでにAIリストラがはじまり、新卒などは就職氷河期に差し掛かり、ブルーワーカービジオネアが生まれ話題となっています。

新卒採用を取り巻く環境は生成AIの普及により大きく変わりつつあります。単純作業はAIに代替される一方、データを読み解き、新しい価値を生み出せる人材の需要は確実に高まっています。では、この変化の波を前に、徳島の企業はどのような採用戦略を描くべきなのでしょうか。

大手企業は「高スキル新卒」に投資を始めている

最近では、AI活用や高度な分析ができる学生が新卒の段階から高年収を提示されるケースも珍しくありません。首都圏の大手企業では、新卒で年収1,000万円クラスという例すら出始めています。
ただし、こうした人材はそもそも母数が少なく、地方では現実的に採用が難しいのが現状です。

一方で、高スキルを求めるあまり、企業側が「新卒の時点から実務レベルを期待しすぎる」傾向も生まれています。実際には、創造性や課題解決力は経験の積み重ねで育つものであり、入社直後に成果を出せる学生はごく一部です。長期的な成長を見込んだ“投資としての新卒採用”という視点がますます重要になります。

地方・中小企業が取るべき採用指針

1.適正な給与の提示、休日、待遇などの見直し

大手企業と初任給額を競い合う必要はありませんが、自社の採用競争企業との給与差が大きいと採用競争力に大きく影響を受けることは間違いありません。前々回コラムでも徳島県の企業の初任給データをご紹介にしていますので、ご参照にいただき、適正な給与の設定をいただければと思います。

また、大手企業ほどの給与はなくとも、働きやすさもとても重要です。休日日数が多い、残業が多すぎない、時短勤務が取れる、産休・育休の取得実績(女性も男性も)がある、有給休暇の取得がしやすい、有給休暇を半年と待たず取得できるなど、従業員が長く働きやすい環境作り=採用力にも直結します。

【コラム】初任給引き上げの“真の動き”を捉える―横並びが崩れた構造変化と徳島の初任給分析―
https://mutsubi-a.jp/for-hr-professionals/starting-salary-increase-tokushima/

2.「自社で活躍できる可能性」を見極める採用へシフトする

大手が採用競争を加速させる一方、その枠に入れなかった学生の中にも、魅力的な人材は多く存在します。中小企業に求められるのは、「社会的に優秀と評価されやすい人材」よりも「自社で成長してくれる、適切な人材」に求める人物像に設定することです。

定期的な人材採用をしている企業の場合、求める人物像の再設定をする機会が減っているのではないかと思います。しかし、AIの普及によって社内での業務も変容し、顧客ニーズも変化しています。そのためにはまず、業務の内容や状況を改めて確認し、その業務に必要な”自社に必要な人材”の要素を再度、見直すことが大切です。

かつての採用のように、“ふるい落とす採用”ではなく、 “自社と相性の良い人材”を丁寧に見極め、一本釣りをすることが、今後の採用力強化につながります。

3. 若手の強みを「効率化・DX」の推進役として活かす

新卒初任給の金額は上昇を続ける環境の中、「給与を上げても、それに見合う仕事ができるのか?」という不安の声をお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし、若手だからこそできる提供できる価値も確かにあるはずです。

例えば、最近の若者は電話をすることが苦手とよく言われます。従来より電話を取るのは新人の仕事と言われてきましたし、そこで自主的に動けない若者を見ると幻滅することもあると思います。しかし視点を変えてみると、今の新卒世代は10代のころからSNSに親しんできた世代であり、テキストコミュニケーションはとても得意だったりする場合もあります。こういった若者に会社SNSアカウントの運用や、社内チャットツール導入を任せてみると、企業全体の生産性改善につながるケースがあります。

多くの若手の特徴として、
・WEB・デジタルツールへの抵抗がない
・AIや最新サービスの吸収が早い
といったことがありますので、逆に年長の従業員の苦手分野を任せてみる、といった感覚もいいかもしれません。

“従来のやり方を押し付ける”のではなく、若手の得意分野が自然に発揮できる環境づくりが、給与に見合う価値を生むポイントです。

弊社のご登録の求職者の中でも、新卒採用で入社した企業で非常に業績があがりにくい状況だったため、動画制作やSNS発信を自らの企画で立案し、効果を上げた方がいました。従来のやり方では効果が出にくくなっている中、新たな手法として非常に効果的だったのではと思います。

一方で、経営者からは従来のやり方ではないため、評価には含まないと断言されてしまったそうで、心が折れて転職活動をされることになりました。

実は類似するような事例は多くあり、若手が高いITリテラシーを発揮し成果を上げていることに気づいていない、導入を拒絶する、評価しないなどが理由で離職につながることもあります。若手の力に気づき、適性に評価することが採用・定着にもつながっていきます。

中途・副業・在宅など「人材ミックス型」の採用へ

採用難の時代には、新卒採用やフルタイム・正社員採用だけにこだわらず、多様な人材や働き方を組み合わせることが重要と考えられます。

・中途人材での専門職人材
・在宅ワーカーや副業人材で不足スキルを補う
・短時間勤務等で女性のライフイベントによる離職を防ぎ、人材流出を抑制

AI時代は、企業側の柔軟性も競争力になります。「一人で全てをこなす社員」ではなく、必要スキルを組み合わせる発想、そしてマネジメントが求められます。

「女性のライフイベントによる離職を防ぐ」ことについて挙げましたが、柔軟性のある働き方は子育て中の女性だけにとどまらず、介護がある方、持病がある方などすべての方にとって働きやすい環境になるかと思われます。

また、「若者は時代を反映している」とも言われますが、働き方の柔軟性はそういった価値観を持つ若い世代への訴求としても効果的かと思われます。ライフイベントがあっても働き続けることができる環境や、より成長したいとい想いをかなえるため他社での副業を許可したり、その逆として本業がある若手人材を副業で積極的に受け入れるなども、柔軟で魅力的な環境に移りますし、貴重で希少な若手人材を確保することにもつながるのではないかと思います。

まとめ

AIの進出により、社会全体で“求められる人材像”が大きく変わりつつあります。
徳島の企業が採用活動を進めるうえでも、基本的な労働環境や条件を整えることを前提としながら

・自社で活躍できる可能性を見極める採用
・若手のデジタル適応力を活かす環境づくり
・人材ミックス型の柔軟な採用

この3点がますます重要になっていくと考えられます。

ただ、本当に「自社が必要とする人材」とは何か、なかなか難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ムツビエージェントでは、徳島の労働市場をリアルタイムで把握しながら、企業の状況に応じて「今、本当に必要な人物像」を一緒に整理することも可能です。

採用したい人材像と、実際の市場感にズレが生まれないよう、条件すり合わせを行いながら、企業と候補者双方にとって最適なマッチングを目指しています。

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