先日、徳島で開催された四国IT協同組合の全体会議で、「徳島におけるIT人材紹介業の現状」の講演を行ってきましたので、その講演の内容を一部ご紹介させていただきます。
全国的にも人手不足の中、IT化やDX化での省人化がますます期待される中で、IT人材の獲得が全国的にも激しくなってきています。
特に、IT人材は他の業種と比較してもリモートワークなどで「どこでも働ける」環境を得やすいため、徳島へUターンしたい=徳島の企業への転職とはなりにくく、UターンでのIT人材の確保が難しくなってきていると実感しています。
まず、どれくらいIT人材の確保が難しいか、求人倍率からご覧いただければと思います。
業界別・職種別 求人倍率の比較
業種別求人倍率になります。IT・通信業界がいずれの業界においても最も求人倍率が高くなり、最も人手不足の業界となっています。
過去の求人倍率もご覧いただきますと、少しずつ少しずつ求人倍率が高まってきている様子がご理解いただけるかと思います。
職種別求人業界もご紹介いたします。
IT・通信のエンジニアにおいてはより求人倍率の高さが深刻で、13.28倍となっています。
1名のITエンジニアを13社が取り合っているということになりますので、IT人材確保がいかに難しいかご理解いただけるとかと思います。過去の数字も一緒にご覧いただければと思います。
IT業界の方でも、求人倍率が、採用難易度が少しずつ高まる中、徐々に採用がしにくくなる中、採用戦略や労働条件を変えることができなかった企業は、IT人材の確保が難しいという状況になってきているようです。
ましては、事業会社が社内SEを採用するとなると、数年前の経験をもとに採用条件を設定するので、市場との乖離が起きていて、そもそもの応募者を確保することが難しい状況に陥りやすいのではないかと思います。
IT人材の熾烈な採用競争
言わずもがなの面もありますが、IT人材の採用競争が激しくなる中、各社労働条件を大幅に変更し、IT人材の獲得を目指しています。
●給与のアップ
●年間休日の増加(週休3日制の導入)
●リモートワークの積極的な導入
などが当たり前に行われるようになってきています。特に、年収相場はわずか3年で200万円以上アップしているとも言われています。また、優秀なエンジニアになればなるほどフルリモートでないと働きたくないという方も多く、リモートから出社型に変更したとたん、離職者が相次ぐという現象も良くあるようです。
企業としては頭の痛いところですが、そもそもの給与制度や出勤制度などを見直すことや、人材や能力、希望に応じた柔軟な給与設定や出勤制度もエンジニアを確保するためには必要になってくるのではないかと思います。
徳島のIT企業へ転職した方の属性
性別で言うと、男性が86%と非常に多く女性が少ない環境です。全国的に見ても、男性が78%という割合で、男性が多い職場でもあります。数年前はITエンジニアの働き方は特に熾烈だったこともあり、女性が働く環境としては厳しいものもあったのかもしれません。
全国的には、IT人材の転職成功年齢は20~30代が中心ですが、徳島では20~30代の割合は約半数、40代以上のIT人材も転職成功しています。年代が高い方は、リモートワークよりもリアルで働くことを望む傾向もあり、出社型の徳島での勤務環境を前向きにとらえている傾向もあるようです。また、技術分野的にも最新技術を取り扱っている企業も少なく、年齢が高い方が経験で十分対応できることも、採用に繋がる傾向にあるようです。
ITエンジニアの募集をされる際、多くの企業が「経験必須」を希望されますが、前述しましたように、ITエンジニアの獲得の難易度が非常に高まる中、経験者ばかりの採用は難しくなっています。IT人材獲得のためには、IT関連の非経験者の獲得・育成が急務になると思います。
徳島のIT企業でも、徐々にIT関連未経験の人材の採用や育成も行われるようになり、弊社での紹介実績の33%は経験者ではありません。
ITエンジニアは、要件定義やプログラミングなどを行うため、論理的な思考力が求められるのですが、知能が高く、優秀な方であれば適応も可能なようです。また、PC創世記はごく一部の方しかPCを触れない、またITエンジニアは非常に専門性の高いものでしたが、より日常的にPCを触る機会が増えてくる中で、専門分野で働いていない方でもプログラミングへの理解があり、苦手意識がない方も増えてきています。
特に、前職をご覧いただければ、金融や法人営業の経験者など比較的優秀な方や、経理・生産管理・研究・機械・電気、保守メンテナンスなどPCなどに非常に親和性の高い業務経験出身者が採用されていることがわかります。
それでは、最後に徳島のITエンジニアの転職時の年収をご覧いただきましょう。平均年収は392万円で、全国平均年収442万円と比較するとマイナス50万円になります。個人的な感想としては、思った以上に大きな開きはなかったかなと感じます。
徳島でも、600~750万円の年収帯での転職もあり、優秀なエンジニアを獲得するために都心部とそん色のない給与を提示するケースも多いようです。一番多い年収帯は、300~349万円ですが、今後はこの給与帯で人材を確保するのは難しくなるのではないかと思います。
まとめ
●徳島のIT企業がエンジニアを獲得するために
今後、徳島でIT企業がITエンジニアを獲得するためには、改めて労働条件が人材にとって魅力的なものになっているのかを見直す必要があると思います。給与面の見直しは効果的だと思いますが、給与面が難しければ、より働きやすい労働条件、例えば、残業0時間、時短勤務可、リモートワーク可など、働き続けやすい環境の提示があればと思います。
また、IT業界は経験が必須のケースが多いのですが、ここも見直していくことをお勧めします。プログラミングなどは経験者でなければならない面もあると思いますが、例えばヘルプデスクなどカスタマーサポート、顧客対応などはコミュニケーション力がある人材が知識を身に着けることで対応ができることもあると思います。専門的な技術を持つ人にはスキルを発揮いただき、分業化を行うことで、生産性も上がるのではないかと思います。
また、上流工程になればなるほど、顧客との折衝なども重要になってくると思うので、交渉力やコミュニケーション力が高い若手人材を育てていくという企業も増えてきました。
特に他業種からIT業界へ転職したいという若者は相当数増えてきています。優秀な方も多いので、ぜひ未経験を採用することをご検討いただければと思います。
●非IT企業の事業会社がIT関連人材を採用する場合
非IT企業が社内SEを採用する際は、特に休日日数や休みの曜日がIT関連勤務の人材が希望する条件になっているのかを確認することをお勧めします。ITエンジニアなど基本的には残業はあれど、年間休日120日以上、土日祝休みが当たり前の業界です。そのため、業界によっては土日祝休みではなく、年間休日が120日以下という企業がIT関連人材を募集しても、休日や休みの曜日を見て、希望をされません。
また、プログラミングができる方を募集されるケースもありますが、そこまで高度なITスキルが本当に必要かどうかを再考することもお勧めします。開発となるとITベンダーに発注することがほとんどだと思いますが、その際必要なことは開発力ではなく論理的な思考や業務理解、開発に落とし込む中でできる、できないを判断できる力やシステム全般を理解できる力だと思います。技術に偏った人よりも文系的な人材の方がマッチすることも往々にあります。
社内でのシステム、IT関連をより強化したいという企業はご参考にいただければと思います。