ストレスに対処するために有効な感覚として「SOC」が注目されています。
「病気の原因」を探すのではなく、「健康の原因」からアプローチするのを健康生成論といい、その中核的な感覚(sense)として挙げられているのが「SOC」です。
SOCはsense of coherenceの略で、センス オブ コンヒレンスと読むそうです。直訳すると一貫している感覚という意味で、「首尾一貫感覚」と呼ばれます。
心身ともに健康な人たちが共通して持つSOCが高いという感覚を理解することで、このストレス社会を乗り越える手助けになればと思います。
また、SOCの高い人材は、優秀な社員や役員になる可能性の高い人材だと考えられます。
社員の採用・教育・研修においても参考にいただければと思います。
高SOCの特徴とは
SOCが高い人は、低い人と比較して問題解決能力が高い傾向があります。間題を客観的に理解し、解決に向けて積極的かつ戦略的な行動や思考をとる傾向が認められたそうです。自己認識においては、自尊的でありながらも客観的という特徴もあります。
また、コミュニケーション力が高いことも認められています。例えば、他者の意見や気持ちに配慮しながらも言葉やそれ以外のコミュニケーションを駆使して効果的な自己主張を行うことができるそうです。相手を尊重しながら適切な方法で自己表現を行うことをアサーティブなコミュニケーションといいますが、その能力が高く対人関係に強いと考えられます。
ホロコーストを生き抜いたたくましい女性たち
このようなSOCですが、発見された経緯も興味深いところです。研究対象は第二次世界大戦時にナチスによって強制収容所にいれられ、そこから生還した女性たちです。強制収容所を経験した女性は、経験していない一般的な女性と比較して、精神が害されていることが多く、対象者の7割が何かしらの問題を抱えていました。
しかし、残りの3割の女性は心身ともに良好な状態を維持していました。この健康な3割に注目し、何が人を健康たらしめるのかを研究し、発見されたのがSOCです。
SOCは3つの概念によって構成されています。
SOCを構成する3つの概念とは
①現実把握感
困難の中にあっても状況を理解し、予測が可能だという感覚です。明日自分に何があるか「わかる」ということで、「冷静さ」と言い換えることができそうです。
それがないのは、「明日、自分が一体どうなるか分からない」です。まさに収容所は、明日自分が生きているかどうかさえ分からない状況でしょう。とてつもないストレスだと思います。そのような中にあって状況と将来を冷静に判断する力は、困難と闘いストレスに対抗する武器になります。
会社でも同じだと思います。明日自分が何をするのか分からない、将来があるのかどうかわからに状況はストレスになるでしょう。自分の置かれている状況を理解し、予測ができることはストレスを軽減します。
②処理可能感
困難な状況に陥っても、解決する力が自分には備わっているという感覚です。「なんとかなる」という感覚であり、希望を見出す力とも言えるかもしれません。希望がない状態は「絶望」です。
強制収容所の中で「なんとかなる」という感覚を持つのは極めて困難だったと思いますが、そのような状況だからこそ生きる希望を失わないことは大切だったと思います。
困難な仕事やマネジメントでも、とてもできないと思わずに自分なら何とかなると希望を持ち続けることは大切です。
③有意味感
自分が今、行っていることに意味があることだと信じられる感覚です。意味づけができる能力という言い方もできると思います。
困難に出会ったときに、これを乗り越えることが自分の成長に繋がるとか、誰かの役に立てるとか、報酬を得らえるといった価値を見出すことができればやる気がわいてきます。
研究対象となった女性たちは、強制収容所のような場所であってもその経験が自分の人生にとって意味があるものだととらえることができていたということでしょう。
仕事でも困難があったとしても、長い人生にとってはそれを克服することが価値のあることだと気づければ前向きな気持ちで取り組めそうです。
あなたのSOCは高い?低い?
さて、SOCについての理解は深まったでしょうか。
自分のSOCが高いか低いか気になるところではないでしょうか?そんな人のために検査項目を挙げます。下記質問にあてはまらない人ほど、SOCが高いといえます。
- 不慣れな状況にいて、どうすればよいのかわからないと感じることがある。
- 気持ちや考えが非常に混乱することがある。
- 本当なら感じたくないような感情をいだいてしまうことがある。
- これまで「自分はダメな」人間だと感じたことがある。
- 日々の生活で行っていることにほとんど意味がないと感じることがある。
- 自制心を保つ自信がなくなることがある。
まとめ
人手不足ということもあり人手が足りず、常に業務過多でストレス値の高い職場もあるかもしれません。
高SOCの人材のようにストレスに強いタフな人材を採用できれば一番ですが、タフで優秀な人材は引く手あまたで、現実把握感が強い人材はより良い環境を見つけ、転職できる能力を持っているとも言えます。
SOCが高い人は「歯磨き」「運動」をよくする傾向があるそうです。生活習慣とSOCは相関があるようです。
正しい生活習慣を身に着けることで、今日もこれができた、明日自分に何があるか「わかる」現実把握感が生まれ、毎日の良い生活習慣が身につき健康な心身となることで、自分には解決できるという処理可能感が生まれるのではないかと思います。
健康経営を取り入れ、社員に正しい生活習慣を取り入れ身に着けてもらうことで、既存の社員のSOC度を高めるということも大切だと感じます。
また、職場においても何か問題があっても「なんとかなるんだ」ということを管理職や上司が示すこと、「今やっている仕事は社会のためにも、自分自身のためにも役立つことなんだ」と伝えることで、社員のSOCが高まっていくのではないでしょうか。