今年も2023年改訂の最低賃金が、47都道府県で決定し、徳島県では2023年10月1日より適用される予定です。
徳島県の最低賃金は、「896円」で昨年855円より41円アップしました。しかし、全国順位でいうと、昨年の徳島県の最低賃金の全国順位は33位だったものの、2023年は一気に順位が下落し46位となっています。
徳島の最低賃金の順位の下落は、徳島の企業の採用競争力低下を招きかねず、非常に危機感をもってこのニュースを見ています。
企業誘致などを行う時に、徳島の賃金の安さは企業にとっては魅力だと思いますが、物価上昇に合わせた賃金アップをという掛け声がある中、「最低賃金が低い地域」は移住やUターン者の目にはどのように映るのでしょうか。
また、皆様の声もお聞かせいただきたいと思います。
それでは、最低賃金についての解説とこの度徳島の最低賃金のランキングが下がった背景を解説したいと思います。
2023年の最低賃金の改定ポイント
まず、改めてとなりますが、最低賃金について解説します。最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければいけない賃金の最低額を定めた制度です。
使用者が最低賃金以上の賃金を支払っていなかった場合、罰則が適用され労働者にその差額を支払う必要があります。毎年8月~9月頃に改定の発表、10月頃から順次発行となります。
そこで「2023年度徳島県の最低月給・年収賃金額の早見表」を作成しましたので、ご参考に下さい。
人事ご担当者の方は、労働条件の見直しや求人作成の際にご活用ください。また、最低賃金での給与支給を受けている方は、10月1日以降の給与改定に準じて給与が改定されているか給与明細でご確認ください。
2023年10月に改訂される徳島県の最低賃金をもとに、月給・年収で計算し、表にまとめています。
徳島県の最低賃金額:896円
年間休日 | 月給 | 年収 |
100日の場合 | 15万8,293円 | 189万9,520円 |
105日の場合 | 15万5,307円 | 186万3,680円 |
110日の場合 | 15万2,320円 | 182万7,840円 |
115日の場合 | 14万9,333円 | 179万2,000円 |
120日の場合 | 14万6,346円 | 175万6,160円 |
125日の場合 | 14万3,360円 | 172万320円 |
最低賃金を896円として、1日の就労時間を8時間として試算しています。
就労時間によって条件が異なるので、あくまでも目安としてご確認いただき、自社でも正確に計算ください。
最低賃金の決定方法
それでは、最低賃金がどのように決定されるのか、徳島の最低賃金がどのように決定されたのかを解説します。
1.各都道府県をランク別で分類
最低賃金は各都道府県をランク制度で分類します。改定審議は、厚生労働大臣からの諮問をうけた中央最低賃金審議会が調査審議し、改定の目安を提示します。
ランク制度は、1978年に始まりましたが、各都道府県をどのランクに位置づけるかについては、数年に一度見直しが行われています。最低賃金のランク制度は、複数の経済指標から作成される「総合指数」をもとに検討します。
都道府県をABCDの4つに区分したうえで、各ランクで目安の金額を示し、最低賃金の引き上げ額を決定します。
2.ランク別での区分が4区分から3区分に変更
2023年10月から発行される最低賃金では、初めてランク制度を4区分から3区分へとランク数の変更を行いました。これに伴い、都市部と地方の地域格差を是正するという狙いがあります。
今年のランク別の最低賃金の基準額もご参考に下さい。ランク別最低賃金基準額は現行の時給よりも上乗せすべき賃金額です。
<最低賃金の改定に用いるランク制度の再編>
2022年10月~ | 2023年10月以降 | ランク別最低賃金基準額 |
Aランク(6都府県) | Aランク(6都府県):+41円 | 41円 |
Bランク(11府県) | Bランク(28府県):+40円 | 40円 |
Cランク(14道県) | Cランク(13県):+39円 | 39円 |
Dランク(16県) | − | − |
3.徳島県の区分がCランクからBランクへとランクアップ
2023年度の最低賃金のランク再編により、徳島県の区分はCランクからBランクへとアップしました。
4.地域ごとに最低賃金が決定
最低賃金は、公益代表(有識者)、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会において議論され、都道府県労働局長が決定しています。
より詳細に述べると、中央最低賃金審議会が提示する引き上げ額の目安を参考にし、各都道府県の地方最低賃金審議会のなかで地域の実情を踏まえた審議・答申を得たのちに、異議申出に関する手続きを経て決めていくというのが一般的な流れです。
つまり、地域で発言力を持つ方や、はたらく労働者、経営者の代表が集まって、最終的に最低賃金を決めるということです。
5.徳島の最低賃金が46位になった理由
2023年の徳島県の最低賃金ランキングでは、全国ワースト2位という結果なってしまいました。
なぜ順位が大幅に下落したのか、という点について解説します。
実は、今回の改正で、Cランクの県が大幅に上乗せ額を引き上げました。前年度と比較し、上乗せ額が最も大きかったのは、島根県と佐賀県の47円、次いで山形県と鳥取県が46円です。39円の引き上げ額にプラスし、県独自での引き上げ額が7~8円となっています。
一方、徳島はランク制による引き上げ目安額40円に加えて、上乗せ額が1円となり、計41円の引き上げをしました。
Cランクの県の多くは、都市部との格差をできるだけ少なくし、人口流出を防ぐという狙いで大幅に上乗せをしています。このような流れで、徳島県はBランクに位置しながらも、2023年度の全国最低賃金ランキングが46位となってしまいました。
賃金アップは徳島県の喫緊の課題。企業が主導しながら賃金アップを目指したい。
1997年以降、日本の賃金がほとんど上がらず、現在に至っています。
様々な要因はありますが、採用おいて考えると、買い手市場の中では、賃金アップのメリットが企業にはなかったのではないでしょうか。また、労働者もデフレが続く中、生きていくうえで賃金に関して、大きな不満も生まれていなかったのかもしれません。
しかしながら、目に見えて日々物価が上昇する中、人材にとって“賃金”は非常に重要な問題です。この2~3年で、弊社の登録者の中でも「給与が不満で転職したい」という方は格段に増えてきました。
特に、今回の徳島県独自の引き上げ額が1円となりましたが、その他県との感覚の違いが浮き彫りになってしまったと思います。私自身も「徳島価格」の安いモノを好んでしまいますが、いつまでも賃金における「徳島価格」を徳島県内で横並びをしていくと、徳島県全体の採用競争力の低下につながってしまうのではないでしょうか。
インフレ気味の経済状況に加えて、生産労働人口は減少し、人手不足は今後も一段と深刻化しています。国外で働く日本人も増え、リモートワークで働く人も増え、採用競争に地域差がなくなってきています。
地域別最低賃金の全国平均は、2023年10月以降に1,004円。徳島県の最低賃金は896円です。
各企業は、最低賃金の896円を目安にするのではなく、全国平均の1,004円を念頭におき、給与改定をご検討いただくと良いのではないでしょうか。
下位・上位他県・四国四県での最低賃金の比較や過去の推移
徳島県の立ち位置をご理解いただくため、データをグラフにまとめています。
ぜひ、ご確認いただければと思います。
最低賃金下位の10県のうち、8県がCランクに位置しているが、Bランクの徳島県はCランクの他県より最低賃金額が下回っています。
最低賃金下位(都道府県) | 最低賃金 | ランク |
岩手 | 893 | C |
徳島 | 896 | B |
沖縄 | 896 | C |
秋田 | 897 | C |
愛媛 | 897 | B |
高知 | 897 | C |
宮崎 | 897 | C |
鹿児島 | 897 | C |
青森 | 898 | C |
長崎 | 898 | C |
最低賃金上位(都道府県) | 最低賃金 | ランク |
東京 | 1113 | A |
神奈川 | 1112 | A |
大阪 | 1064 | A |
埼玉 | 1028 | A |
愛知 | 1027 | A |
千葉 | 1026 | A |
京都 | 1008 | B |
兵庫 | 1001 | B |
静岡 | 984 | B |
三重 | 973 | B |
四国4県、近隣の関西圏と比較しても、徳島県の最低賃金額は低くなっています。近県や都市部への人口流出を食い止めるためにも、最低賃金の見直しは徳島県の喫緊の課題といえるでしょう。
四国4県 | 最低賃金 | ランク |
香川 | 918円 | B |
徳島 | 896円 | B |
愛媛 | 897円 | B |
高知 | 897円 | C |
関西 | 最低賃金 | ランク |
京都 | 1008円 | B |
滋賀 | 967円 | B |
三重 | 973円 | B |
大阪 | 1064円 | A |
兵庫 | 1001円 | B |
奈良 | 936円 | B |
和歌山 | 929円 | B |
徳島県の最低賃金の推移は以下の表の通りです。
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