企業の副業人材の活用についてのニュースがこの数ヶ月内で一気に増えてきました。
特に、大手企業や自治体が副業の人材を採用するようになり、大きく潮目が変わり始めたと感じます。
本コラムでは、なぜ副業ブームが巻き起こっているのか。特に、この2020年から大きく変わりつつある企業の副業人材の活用事例のご紹介や今後の副業人材の動向予測をお伝えします。
地方や徳島にも副業人材活用の波はやってくると思います。情報収集としてお役立ていただければ幸いです。
大手企業や地方自治体も活用を始めた副業人材
・2020年7月、ヤフーは、他社の正社員として働く副業人材100人強と業務委託契約を結ぶと発表。
・2020年7月、ユニリーバは、マーケティングや人事などを10人~30人の副業人材の公募を発表。
求人大手のマイナビも副業人材向けサイトを2020年10月にオープンするなど、大手人材会社の参入によって本格的に副業市場が生まれ始めていると感じます。企業の人材確保は、正社員、契約社員、パート、派遣などが中心でしたが、副業人材での人材確保の流れが誕生したといえるでしょう。
特に、注目すべきは、副業人材に依頼する仕事内容です。
ヤフーでは、戦略や事業プランに関するアドバイザーとしての業務、ユニリーバではマーケティングや人事など、今までであれば正社員が担うような戦略立案や企画など上流工程の業務を副業人材に依頼しているのです。副業人材に期待する役割や位置づけが大きく変わりつつあります。
働き方改革によって副業の推進が始まる
そもそも、働き方改革の中の一環で、政府が推進し始めた新しい働き方の一つが「副業」です。
副業を推進することによって、人手不足解消や将来の増税に向けた所得アップ、そして国民一人ひとりの生産性向上を目指すことを目的にしています。
そのため、2018年1月に、厚生労働省のモデル就業規則の中から、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除され、副業・兼業について規定が新設されました。つまり、2018年より政府が企業への副業の容認、推進を目指すよう具体的に方針が示されたのです。
2017年の段階で、日本国内で副業を行っていた人は約270万人。副業・兼業を許可する企業の割合は約10%でした。
つまり、副業をする人も副業を許可する企業もほとんどないというのが、3年前の現状です。
そして、2019年は、副業を容認・推進すると回答した企業は30.9%という調査データが発表されています。
約3倍の企業が副業を容認・推進し始めました。
※株式会社リクルートキャリアの兼業・副業に対する企業の意識について調査より
企業が副業を容認、推進し始めた理由
多くの企業が副業を禁止していた理由は、社員に副業を許可することが、企業にとってリスクが大きいと考えられていたからです。
特に、以下の3点が副業を阻む大きな理由としてあげられていました。
・本業へ支障をきたすのではないか
・労働時間の管理はどうするのか
・競合企業などへの情報漏えいはないのか
リスクの高い副業で稼ぐことよりも、残業時間を増やし時間外手当で所得を増やすことが企業・社員双方にとってのメリットになっていました。
しかし、働き方改革によって残業時間の規制が強化されるようになり、会社員が残業で稼ぐことが難しくなってきました。
特に、コロナの感染拡大を受け、労働時間の削減が一気に加速され始めました。
その結果、残業代が減ることで、年収が大幅にダウンする人も増えてしまいました。
そのため、企業としては削減した残業代を、副業によって社員の所得維持につなげるため、副業の容認・推進を始めています。
実際の調査データでも、企業が副業の容認、推進をする理由で1位に上がったのが、「社員の収入増につながるから(40.8%)」となっています。
また、「人材育成・本人のスキル向上につながるため(30.4%)」など、本業以外の業務を行うことでの社員の成長を期待する企業も増えてきています。また、副業が一般化される中、副業を禁止することが離職リスクにつながると感じる企業も増えています。
令和の時代に入り、企業も社員に対して「一人ひとりの個の尊重」や「働き方や生き方の自由」を認めることが、企業に優秀な人材をつなぎとめる方法の一つにもなっていると感じます。
コロナ禍におけるリモートワーク化が副業市場を活性化させる
特に、コロナ禍におけるリモートワーク化が新たな副業市場を作り出し始めました。
都心などリモートワークが浸透している地域では、オフィスレベルの環境が個人宅で完備されるようになっています。
残業時間が削減され、通勤時間から解放された都心のハイレベル人材が副業市場に流入し始めました。
2020年以降においては、特に「エキスパート型」の副業市場が活発になるのではないかと思います。
※エキスパート型とは、副業の中でも報酬が高く、非常に専門性が高いオフィスワークと位置付けています。以下に副業についての分類をおこなっています。
感度の高い企業などは、自社にはない専門性の高い高度なスキルを持つ人材を確保するため、副業人材の活用を積極的に始めています。また、地方の企業、もちろん徳島の企業にも今後、副業人材を活用し、自社の成長へつなげることができるチャンスが生まれると感じます。
次回のコラムでは、エキスパート型の副業人材に焦点をあて、副業人材の採用方法や活用事例についてご紹介します。