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面接で人材への魅力付けを行い、採用成功に繋げる「SVR理論」

人はどのような人に魅力を感じ、好意を持つでしょうか?

面接の中で、人材への魅力付けを行うことで、より必要とする人材を獲得したいとお考えの経営者、人事担当者の方に「SVR理論」をご紹介したいと思います。

人間関係がどのように深まっていくのかをモデル化したのが「SVR理論」です。
それによると、「刺激(Stimulus)」、「価値観(Value)」、「役割(Role)」の3段階で関係が発展するとされます。

表面的な魅力

最初の印象で重要なのは、相手から受ける刺激(Stimulus)です。表面的な魅力ということです。

<表面的な魅力>
・外見(見た目、清潔感のある服装や髪形)
・行動(しっかりと挨拶ができる、受け答えがしっかりしている)
・社会的評価(出身地、学校、経歴、社会的地位、家庭環境)

「人は見た目で判断してはいけない」とは言われますが、外見的魅力を排除することはできません。見た目がよい人に対して、内面も素敵な人だろうと思ってしまう「美人ステレオタイプ」という現象があります。実際に、人材系企業では、優秀で見た目の良い若手社員を新卒採用担当に配属し、採用強化につなげています。

とはいえ、美女やイケメンでなくてはならないわけではなく、清潔感があり、身だしなみが整っていること。姿勢が伸び、ふるまいや所作、言動が丁寧で、良い印象を与えることができればOKです。社会人としての基本だと思いますが、採用をご担当される方は特に見た目を意識することは大切です。

価値観の類似

初対面をクリアすると、次に重要になるのは価値観(Value)です。
具体的にいうと、「好き―嫌い」「良い―悪い」「賛成―反対」などの判断が類似していることです。

<価値観が類似する例>
・経営理念や社風を共感されている(好き)
・製品やサービスを愛用されている(良いと思っている)
・会社の特徴や制度を好意的にとられている(賛成している)

面接対象の人材に、自社への興味関心があるかというご質問をされることも多いと思いますが、人材側に寄り添って人材の価値観を掘り下げ、価値観に対して同一の価値観があることを示すことが大切です。

人材のコメントに対して面接官のコメントを2つ用意しましたので、価値観への類似する回答を選んでみてください。

1. 「私は勉強が好きで、入社後も成長を続けられる環境で働きたいと思っています」
A. 入社したら、みんな身に付きますよ。そう難しい仕事ではないのでご安心ください。
B. 難しい仕事もありますが、しっかりと勉強すれば身に付きますし、研修や勉強ができる環境がありますし、成長できる環境です。

2. 「私は勉強が好きで、入社後も成長を続けられる環境で働きたいと思っています」
A. 技術も大切ですが、それ以上に経営理念を大切にしています。
B. ものづくりが大好きな社員が多く、みんな技術が大好きなんですよ。

3. 「この商品が大好きで、いつも購入しています」
A. 商品は何でも良いんです。会社としての収益があがることをやっているのです。
B. 私もこの商品が大好きで、この商品のここが特に良いですよね!

Bが価値観に対しての同意ができている回答です。Aも決して悪い回答に見えませんが、引き出した価値観に対して同意はできていない状況です。特にAの回答はやる気がある人材の気持ちを削いでしまう可能性のある回答になっているかもしれません。価値観を引き出したうえで、自社でも、同じ価値観があることを伝えることが重要です。

ただし、自社の価値観と合致しない人材であれば、無理に回答を合わせる必要もありませんし、より価値観が合致する人材を採用することをお勧めします。難しい点としては、採用したい人材は向上心が高く、自主的な人材だが、職場環境としてはそのような人材が少ない、成長意欲を満たす環境があまりないという場合です。

自社とはマッチしない価値観の人材を新しく採用したい場合は、その価値観にマッチする職場環境や人事制度、ポジションを作ることが必要です。

役割分担(相補性)

最後に決め手になるのは、役割(Role)です。
相手ができないこと、苦手なことを補うために、役割分担ができるかが重要視されます。
この補い合う関係を相補性といいます。最初は似ているという「類似性」が重視され、最後は自分にないものを持っている「相補性」が決め手になります。

人材を募集する際は、不足を補うために人材採用を行います。
「体制を強化すること」や「新しい役割を求める」など前向きな募集背景や「人がたくさん辞めてしまった」「仕事の難易度が高すぎで、人が定着しない」などネガティブな募集背景があると思います。前向きな募集背景でも非常に難易度の高く丁寧な説明が必要なこと、ネガティブに感じる募集背景でも、その人材にとっては問題のない事情ということもあります。

いずれのケースにしても、求職者に丁寧に事情を話し、「このような力を持っているあなたに入社いただき、こんなところを補ってほしいと思っています」と伝えられることで、人材も自分に補える役割があると感じ、より関係が深まります。

しかし、ネガティブな情報を隠してしまうと、後々のミスマッチにつながり、離職につながるケースが多いと感じます。ネガティブな情報も伝えながらも、職場環境を率直にお伝えし、価値観の類似や役割分担についてご説明することで信頼感を得るだけでなく、ミスマッチの少ない採用につながると感じます。

とはいえ、自社で募集背景を説明し、魅力付けにつなげる難しさもあると思います。私たちムツビエージェント(株)では、募集背景をお聞きした上で、ネガティブに感じられる部分もその人材ならばやりがいを感じる役割になることをお伝えし、魅力付けにつなげることも行っています。募集背景をお伝えすることが難しい場合も、遠慮なくご相談いただければと思います。