男性が妻の出産直後に育児休業を取得できる「出生時育児休業」が、新たに導入されることになり、早ければ2022年10月にスタートします。この新制度は、妻の出産後、夫が8週間以内に、最大2回に分けて計4週分の育休を取得できるというものです。
この新制度では企業に対して、男性社員への育休取得の働きかけを義務付けていることが特徴です。
とは言え、日本の男性の育休取得率は、7.48%。
男性にとっても、企業にとっても育休を取得することに大きな抵抗感があるのではないかと思います。
一方で、2019年にユニセフが発表した「先進国における家族にやさしい政策ランキング」で、父親の育児休業制度の充実は世界1位とされています。
企業にとっても、子どもを持つ父親にとっても、優れた制度を持つ日本。
意識の壁を越えて、育休を取得させる、取得できるようになることで、幸せに働ける父親が増えると良いですね。もちろん、企業にとっても育休を取得させることがメリットにならなければ推進しにくいのではないかと思います。
そこで、男性社員に育休を推進の原動力となる制度と、男性育休取得による職場に与える良い影響についてのご紹介をさせていただきます。
男性社員が育休を取得すると、企業がもらえる助成金
男性社員が育児休業を取得する支援を行った企業に対して、「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」が支給されます。
中小企業では、1人目の助成金は連続5日以上の育休の取得で57万円の助成金が支給されます。
2人目以降は連続5日以上で14万2,500円、連続14日以上で23万7,500円、連続1ヵ月以上で33万2,500円を10人目まで支給頂けます。
育休を取得させにくいこととしては、企業の経済的損失があげられるかと思いますが、一定程度はこの助成金でカバーできるのではないでしょうか。
男性社員の育休中の給付金
企業からの給与の支給はありませんが、雇用保険に加入している場合は、「育児休業給付金」が雇用保険から支給されます。
最初の6カ月は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」、それ以降は50%の支給になります。
ただし、支給の上限額もありますので、ハローワークでご確認ください。また、育休中は社会保険料が免除されるため、休業前賃金の実質8割が保障されることになります。
上限額:支給率67%の場合は305,721円、支給率50%の場合は228,150円となりますので、ご参考にください。※2020年8月1時点
生活の不安もあり、育休を取得できないとお考えの方も、少しは安心して育休を取得することができるのではないでしょうか。
男性社員の育休取得による職場の好影響
☑ 採用に好影響がある
最近では、多くの新卒の男子学生が、育児休業を取って積極的に子育てしたいと考えているそうです。男性育休を導入することも、採用に良い影響を与えることができます。
☑ 家庭生活が安定することで、気持ちよく働ける
家事や育児を行わなかったことで、妻にずっと恨み節を言われると、家庭が安らげる場所でなくなってしまいます。心理的に安心できる家庭環境があることは、仕事で良いパフォーマンスを出すうえでも大切なことだと思います。また、夫婦ともに安心して働ける職場環境だと感謝し、会社への帰属意識も増すことでしょう。
☑ 女性社員との良好なコミュニケーションが生まれる
女性の社会進出が進む中、女性に対してのマネージメントスキルも必須能力となってきました。育休を取得し、家事育児に大変さを理解する男性社員には女性社員も信頼を寄せると思います。また、家事育児の大変さを理解することで、女性への働き方も変わってくるはずです。
☑ 男性社員の意識が変わり、働き方改革を始める※
育休中に、仕事と家庭を両立する覚悟が生まれるそうです。
そのため、より効率よく働くようになります。また、育休中に家事をこなしながら育児に向き合った経験から、人を動かしたり、育てることにはコミュニケーションが欠かせないことを学び、職場で信頼関係を大事にする働き方を意識するようになるそうです。
※明星大学 尾野裕美 原著論文「長期育児休業を取得した男性の内的変容プロセスに関する探索的検討」より引用
男性社員の育休の注意点
男性が安易な気持ちで育休を取得しようとするのはリスクもあります。
育休取得申請中に、不倫をした元議員もいましたが、「育休を取って、妻をサポートする」と言いながら、家事や育児をせずに自分の遊びの時間などに充ててしまう場合も同様に、妻からも職場からも信頼を失ってしまいます。
また、家事や育児のスキルが著しく低い場合も問題になっているケースもあるようです。育児で忙しい妻が、育休中に夫のご飯を作ることが負担になるという記事も良く目にします。育休を取得する場合は、事前に妻との役割分担などを検討することも大切だと思います。
また、職場に対しても育休取得ができるという権利のみ主張するのも危険だと感じます。特に、年配の男性が多い職場ですと、まだ男性の育児に対して理解がありません。これは、良い・悪いという話ではなく、世代間における価値観の違いであり、その価値観の違いを埋めるコミュニケーションが大切です。
自分の家庭の状況を丁寧に伝えて、育休を取りたいこと、また、不在の間はどのように仕事を割り振りするのか、など一方的な育休取得の宣言ではなく、相談をするというスタンスが大切だと思います。また、取得が決定した場合も感謝の気持ちを伝え、仕事の引継ぎ状況を適宜報告する、出産後の様子を定期的に上司に報告するなど、丁寧なコミュニケーションを取ることも大切です。
育児は大変だけれども、子どもとの触れ合いは何とも言えない幸福感を得ることもできます。男性にはその機会が少ない社会でしたが、その機会を得ることで、男性もより幸福を得ることができるようになるのではないかと思います。