転職の際に期待したいことの一つは「給与額」だという方も多いのではないでしょうか。
しかし、その年収の交渉については難しく感じられる方も多いようです。

特に、中途採用の場合は求人票に記載している賃金に幅があります。
例えば、「年収300万~400万円(月収20万円~25万円)」という表記などはよく見ると思います。
もっと幅が大きいものだと、「年収400万~600万円(月収30万円~50万円)」などがあります。
月給ベースで考えると、月給に20万円の差がありますが、こうなると生活水準がかなり違ってくるはずです。

これからの生活に向けて、希望の給与額を提示いただけるかどうかは、とても大切です。
そこで、今回は希望する給与額の提示してもらえる方法について解説したいと思います。

入社することを優先する場合の希望年収の伝え方

「この企業に絶対に入社したい!」
「この仕事がやれれば、給与が低くても良い」
など、給与よりも入社できることを最優先したい方もいると思います。
そうなると、心証をできるだけ悪くしたくない、賃金は下限でも構わない、と考えることもあると思います。

「年収300万~400万円(月収20万円~25万円)」の求人を例にすると、以下のような言い回しがあると思います。

「貴社に入社したいと思っています。賃金は求人票記載の下限、20万円以上であればありがたいです。」
このように言えば謙虚ですし、20万円以下は避けたいという意思はやんわり伝わります。

この時に気を付けたいのは「アンカリング」という効果です。
最初に口にした金額がアンカー(いかり)となり、交渉のスターとになる心理効果の事です。低いアンカーを設定すると着地点が低くなり、高いアンカーを設定すると着地点も高くなるという法則です。

上記の場合だと、20万円からスタートし、20万円で確定されるか、いくらかをプラスするかの検討になりますので、最終的な金額は高くなりにくくなります。

入社を優先し、給与をあまり気にしない、という場合でも、本当にその金額でよいか事前に十分検討しておきましょう。

明確な目標金額があり、年収にこだわりたい場合

「年収400万~600万円」の求人で上限600万円を希望する場合を考えてみましょう。

「年収600万円を希望します」
この場合は、高いアンカーが設定されますので600万円を下回ったとしても、比較的高い金額に落ち着くことが予想されます。

では常に高い希望金額を伝えればいいのか、というとそうではありません。
面接官はこう思います。

「その年収に見合うスキルを持っているのか?周囲の社員も納得するパフォーマンを発揮できるか?」

採用ハードルが上がるはずです。その結果、希望金額に見合うスキルを持っていないとして不採用になってしまうこともあります。

そこで、その高いハードルを越えるために、一つ、役に立ちそうなアプローチをご提案します。

人は「一度手に入れたもの」は「手放したくない」という心理が働きます。これは、保有効果といいます。
たとえ、必要としていないものであったとしても、不思議と「手放したくない」と思ってしまうことは多数の実験で確認されています。

面接でも応用できるかもしれません。自分のスキルをどのように使えるのかを具体的にイメージしてもらうことで、まるで人材を「手に入れた」感覚を持ってもらえれば、「手放したくない」つまり採用したいと思ってもらえるかもしれません。

営業職の場合のアピールの例を考えてみました。

「入社後まずは、御社の文化と社員様を理解し、人間関係を作りたいと思います。同時に前職で培った〇業界のネットワークを生かして新規開拓をしようと考えています。
1年目でも□件は受注できると思います。実績が出せれば、2年目には部下をつけてください。若手を育てながら新規開拓を加速させます。成功経験を積めば、最大手である△社へもネットワークを使って営業に行きたいと思います。
△社から受注できれば、〇業界の会社はこぞって乗り換えてくれると思います。そうなると業界内シェアでトップクラスも現実的な目標になると思います。前職では実際そのような成功体験を持ちました。会社が勢いづいて社員全体の士気が高まりましたし、新規の採用もしやすくなりました。是非、御社でもチャレンジさせてください」

ここまで言われると、なんだかバラ色の未来が手に入った気がしませんか?
具体的な成功イメージで、「手に入った」気になってもらえれば、それを「手放したくない」という保有効果が働いて採用に有利になるかもしれません。

そのタイミングでなら「希望金額は600万円です」も受け入れやすくなるかもしれません。
給与を強気で交渉するのであれば、今までの経験を活かして、入社した後、どのような結果を出すことができるのかを伝えることが大切です。

心理学を用いて紹介しましたが、高い希望を出す場合は、それに見合った貢献が出来ること、そして、その実力があることが大前提となります。

ちょうどよい落としどころとなる希望年収の伝え方

リスクを避けながら希望を伝える表現はあるでしょうか。
心証を悪くしないように希望を伝える言い回しをご紹介します。

「求人票記載の幅、20万円~25万円であればありがたいと思っています」
上限金額も同時に伝えることで、「20万円でいいです」と下限だけ伝える時に比べて、アンカーが低く設定されることを防げます。

「求人票記載の幅であれば問題ありません。希望としては真ん中くらいです」
先方の提示している範囲内ですので印象が下がることは少ないと思います。

「○円を希望していますが、御社の仕事内容に魅力を感じていますのでこだわりません」
希望を伝えつつも、譲歩する姿勢を見せるのもありだと思います。

「御社のご決定に従いたいと思います。適切と思われる金額をご提示ください」
このように、相手に委ねる言い回しもあります。希望を伝えていないようにも見えますが、企業には下手な金額は提示できないというプレッシャーがかかると思います。

「入社時の年収はあまり重視していません。昇給や役職手当があるとのことなので、入社後成果を出せるように努力します」
意欲をアピールできますし、できれば賃金が高い方がいいということもやんわり伝わります。

参考になりましたでしょうか?
給与交渉は、かけ引きをするよりも、自分の素直な気持ちに最も近い表現を考えて頂くのが良いと思います。また、生活に本当に必要な金額についてチェックしておくことも大切です。

年収の交渉をすることに苦手意識を持つ方も多いからこそ、代理人である転職エージェントを通して、適切な年収の交渉を行えることは転職活動でも有効な手段の一つです。
自分のスキルや経験に応じた給与提示を頂きたいという方は、私たちムツビエージェントへご相談ください。

【参考書籍】
ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー 上・下」