Career Advice

キャリアアドバイス

違法?適法? 懲罰金や自爆営業

2023.05.16

昨日はブラジルワールドカップの日本vsコロンビアでした。早起きして応援をしていましたが、残念ながら負けてしまい、予選突破できないことが確定しました。
最後の奇跡を信じていましたので、残念です・・。

国際大会で負けると、ペナルティを課されると噂される国もありますが、企業がそのような制裁を従業員に課すことは許されるでしょうか。少々強引でしたが、今回は企業から従業員に課される「罰金」の違法性(適法性)についてご説明します。

そもそも法律上、罰金は国家が刑罰として課すものであり、一私人、一企業が課すことはできません。従って、「罰金」というのは誤った表記であり、もし使うなら「制裁金」「違約金」「賠償金」などと性質に応じた表記にすべきでしょう。

とはいえ、「罰金」と表記されているから無効、とはなるわけではありません。
通常、その規定や契約の趣旨に従って、出来るだけ有効となるように解釈されます。

それでは具体的なケースごとに検討してみましょう。

欠勤に対しての金銭ペナルティ

欠勤に関しては、ノーワークノーペイ(労働なくして賃金なし)の原則がありますので、日給分が差し引かれることはやむを得ません。
それ以外に、さらに金銭ペナルティとして給与の減額をすることができるでしょうか。
結論としては可能ですが、最低限の条件が3つあります。

  1. 金銭ペナルティが就業規則に規定されている事
  2. 1回の金銭ペナルティの額が日給の半額を超えないこと
  3. 金銭ペナルティの総額が月給の10%を超えない事

例えば、月給20万円だとすると、2万円より多い金銭ペナルティを課すことはできません。5日間休んでも10日間休んでも2万円までです。しかし、別途、懲戒事由として減給や解雇の根拠になる可能性があります。

参照条文
労働基準法91条(制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

商品の買取強制や自爆営業

売れなかった商品を従業員に買い取らせることや、ノルマの未達分を従業員に負担させ、その金額を給与から差し引くことは許されるでしょうか。

結論は、許されません。

違法の根拠として、労働基準法24条に抵触すると考えられます。
同条項は2つの原則を定めており、①全額払いの原則と②通貨払いの原則です。
買い取り額を差し引いた賃金の支給では「全額払い」とはいえませんし、その分は商品等で支払ったというのであれば「通貨」で支払ったとはいえません。

同条違反には最高で30万円の罰金が定められています(同法120条1項)。実は、経営者自身が罰金をとられる立場だったということです。

では、一旦給与の全額を支払い、その後、買い取りを強制するのは適法でしょうか。
私見となりますが、労基法24条1項の潜脱ともいえますので禁じられるべきだと考えます。買い取らないと解雇や減給すると脅された場合などは、強要罪(刑法223条1項)が成立する可能性があります。
このような場合は、自らの意思(任意)で購入したといえるかが判断のポイントとなり、外部的事情からの判断は難しい場合が多いですので、まずは労働基準監督署に相談して下さい。

参照条文
労働基準法24条1項本文(賃金の支払)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
刑法223条1項(強要)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

損害賠償(ミスで生じた損失の補償)

従業員がミスをして、会社に損失が生じた場合、従業員はその損失を賠償しないといけないでしょうか。例えば、発注ミスで在庫を増やしてしまった場合や、営業先を怒らせてしまい既存顧客とその売上げを失ってしまった場合などです。

これは原則として、補償する責任はありません。
ただし、従業員が損失が出るかもしれないし、出てもいい(故意)と思ってした場合や、会社に損害を与えてやろうという意図(詐害意思)があった場合は、道義上、会社から賠償責任を問われても仕方がありません。法律上も従業員の責任が認められるでしょう。
また、故意と同視すべき重過失(重大な注意義務違反)がある場合も、損害賠償される可能性があります。例えば、社用車の運転中に居眠り運転で交通事故を起こしてしまった場合などです。

もう一歩前へ
通常のミスの範囲であれば補償をしなくて良い根拠は、「報償責任の原理」に求めることができます。これは「利益帰するところ、損失もまた帰する」ことを意味します。つまり、利益は会社のもの、損失は従業員のもの、というジャイアンのような考えを法律は公平の観点から許していません。利益も享受する企業は、そのリスクも背負うべきという考え方が背景にあります。
そのため、従業員が損害賠償責任を負う場合でも、会社の請求は通常一定の制限を受けます。

このように社会通念上、まっとうに働いている従業員に金銭的なリスクを負わせる企業には、法律上もやはり問題があります。仕事がつらい、成果が出ないというのが甘えなのか、会社がひどいのか、判断が難しい場合もあると思います。しかし、一生懸命働いても、損害賠償や買取などで従業員が苦しくなる会社にお勤めであれば、労基署へ相談に行き、転職を検討して下さい。
苦しい環境で本当に頑張ったのなら、その経験はきっと評価されると思います。

このコラムを読んでいる⼈に
おすすめです

2024.03.26

男性の育休取得のメリットとは?従業員1000人超の企業の男性育休取得率46.2%から学ぶ。

2023.10.30

【2023年度】企業を取り巻く環境の変化、労働市場の変化、働く人の意識の変化

2023.11.22

大西翔太さん「自由な生き方を叶え、在宅でキャリアを築く道を切り拓く」

転職に関するお役⽴ち情報や、新着求⼈、
また徳島県の地域情報が⽉に1回届きます。
徳島での転職に関する情報収集に
ぜひご利⽤ください。