前編では、直販店のオープン、新商品の開発・受賞など、老舗の酒蔵、松浦酒造さんの新しい取り組みについてご紹介いたしました。後編では、松浦酒造さんが始められた、酒蔵の酒を皆で楽しむイベント「蔵蔵たちきゅう」の魅力をレポートいたします。

◆「たちきゅう」で楽しむ日本酒と鳴門の魅力

まずは、日本酒。生酒、大吟醸、絞りたてと、よりどりみどりです。それぞれの味をじっくり飲み比べるもよし。好きなお酒を好きなだけ飲むのもよし。楽しみ方は自由です。

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蔵元より提供されるおもてなしの一品。オリーブの塩漬けに、いくらを乗せたトロトロ玉子。多すぎて皿には盛りきれませんでしたが、さらに小魚や緑黄色野菜の南蛮漬けもありました。

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同じく、こちらは鳴門の「お煮しめ」。鳴門ではおめでたいとき、この料理が出されるそうです。『おそ松くん』のチビ太が持っている「おでん」みたいな、その見た目も何ともかわいらしいですよね。もちろん味も絶品です。

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鯛、昆布、塩の産地である鳴門だからこその、おもてなし。「鯛の塩釜焼き」です。塩と昆布、それぞれの旨味が鯛のふんわりとした身に染みこみ、ふくよかな味わいが口中に広がります。地元鳴門の魅力も、「たちきゅう」の重要なテーマです。

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◆「満員御礼」の大人気イベントに成長
第1回に参加されたのは、ほとんどが直接のお知り合いの方ばかり。それも30名ほどと、まだまだ小さな集まりだったそうです。それが回を追うごとに参加者も増え、「はじめて参加した」「それまで蔵元まで来たことがなかった」というお客様の割合が増えていきます。
「今では、それまでお会いしたことのなかった方がほとんどになりました」。こうおっしゃるのは、「ナルトタイの店」店長の若林さんです(ちなみに若林さんも、前職は観光ホテル業と、まったく他業種からの転職者です)。

開催頻度も春から秋にかけてほぼ毎月一回ペースとなりました。イベント告知や集客には、チラシや広告の類は一切使用せず、Facebookを通した案内のみであるにもかかわらず、最近では、開催2週間前には50名の定員がいつも「満員御礼」という、大人気のイベントにまで成長しています。
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◆新しい取り組みで古いスタイルを刷新
先述のように、今でこそ見かけなくなったものの、「たちきゅう」自体は、以前にはあった、いわば「古い」スタイルのイベントです。それを、ITという他業種 も経験したUターン者が、新たな試みとして「復活」させることで、女性や若い方など新しい顧客を惹きつける媒体、地元の魅力を発信する媒体となっている点が、大変興味深いところです。

また、FacebookをはじめとしたSNSがとても効果的に使われています。リアルの場での人気(ひとけ)、賑わい、楽しい雰囲気がSNS上での情報拡散の誘引となり、SNSでの伝播が、リアルな場でのますますの賑わいをもたらしています。

と、成功の仕組み、細かな工夫はいくつも発見することができます。が、「たちきゅう」が愛されているのは、何よりイベントそのものの楽しさ、蔵元スタッフのおもてなしの心、「日本酒の魅力、鳴門の魅力を伝えたい」という、松浦さんの強い思いがあってこそでしょう。

過去の「蔵蔵たちきゅう」の模様は、松浦酒造さんのブログ「本家松浦酒造 蔵だより」からご覧いただけます。お近くの方は、ぜひ実際に鳴門の松浦酒造まで、足をお運びください。

◆Uターンが進める、伝統企業の新たな取り組み
いかがでしたか。日本酒の蔵元と言えば、「伝統的」「昔から変わらない」「変わらなくてよい」。そんな「頑固な」イメージがあります。ところが、松浦酒造さんでは、「頑固に」味や品質を追求し、「変わらない」一方で、積極的に新しいことにも次々と取り組まれていらっしゃいます。それを可能にしたのは、社長の松浦さんや店長の若林さんの、ITや観光業という異業種での経験、他県での生活経験ではないでしょうか。

酒造業に限りません。地方の企業というと、どうしても保守的なイメージを持ってしまいがちですが、徳島には、高い志のもと、従来の事業にイノベーションを起こしている 企業や、県外からのIターン移住者、Uターン者が実は少なくありません。伝統ある企業でも、新しい試みを実施しながら、地方の魅力を発信し、徳島での仕事 を日々刷新し続けているのです。(文責/写真:森哲平)

★店舗情報
本家松浦酒造
所在地 徳島県鳴門市大麻町池谷字柳ノ本十九番地
「蔵蔵たちきゅう」の情報は本家松浦酒造のWebサイトからご覧いただけます。